【呼吸練習を習慣化】自分で解決できると歌は上手くなる!まとめ記事
今回で腹式呼吸最後の回になります。まずここまでの振り返りとして「腹式呼吸のメリット、胸式呼吸のメリット」、「今自分がどちらの呼吸を使っているのかチェックする方法」、また腹式呼吸はなかなか女性だと身に付きづらいということもあり「強制的に腹式呼吸にしてチェックする方法」についてお伝えしました。
そしてそこから前回は腹式呼吸を前提とした場合に「口から吸うか、鼻から吸うか問題」というものについて、つまりは呼吸全体についてお話しました。
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今回はそれらのまとめとして、今後の実践としてお話できればと思います。
「呼吸だけで練習する」自分で解決できると歌はうまくなる
まず呼吸に特化した練習をみなさんにはやっていただきたいと思っています。ソルフェージュと言いますが、ボイトレと聞くといきなり声で音階を作る練習を想像される方が非常に多いと思うのですけど、実はそうではなくて一番やっていただきたいのは自分が今現在どの呼吸法なのか、どのようなメリットがあるのかを知ったうえで、まず「呼吸だけで練習する」ということを絶対にやっていただきたいです。まずこれまでお話したように自分がどういう呼吸をしているか知らないと体のどこにどれくらい息が入っているかも知らない状態なので、それこそロングトーンで息が続かないなというときの解決方法にも行きつかないのですね。つまり自分で解決していけるようにならないと歌はうまくならないのです。
「この声の出し方で合っているのかな?」と悩んで次のボイトレまでわからないまま練習に来てしまうことについて私はあまり良しとはしていません。正解、不正解がはっきりわかるように私は理論的にお話しますし、理論的に体の「ここ」がこう下がったら、「ここ」がこうなるよと生徒さんご自身が体感で理解し解決へと導けるようなトレーニング方法しか私は基本的にはお伝えしません。
そうでないと実はボイトレ行ったときに先生から「それ間違っているよ」と言われたときにじゃあこの1週間はなんだったのだろう…となってしまい、一番無駄な時間になってしまいますよね。なので、そうならないように基礎の基礎を知るという練習がまず必要なのです。
それが“呼吸について知る練習”です。ボイトレに通ったらまずソルフェージュからやりたい気持ちはすごくわかるのですよ(笑)ただこういった基礎を抜かさないことが非常に大切なのです。
とにかく「息を吸って吐く」ただこれだけなのですが、これをしっかりマスターしていないと自分が声を出したときに思い通りの声にならないので、結局は「呼吸のトレーニング」に行きついてしまうわけです。
これはそれなりに歌に自信がある人だろうが最初にやらなければいけない練習であることに変わりはありません。
自信があっても例えば壁にぶつかることはありますよね。
「なんかここからうまく歌えないなぁ」とか「本当に成長しているのかなぁ」とか思ったときに一番最初に疑ってほしいのはこの「呼吸」についてなんです。
意外と息が止まっていたり、フレーズが途切れ途切れになっていたりするときに、下あごに力が入ってしまうなど無意識に呼吸の邪魔になることをしていたりするのですね。それに気づかないまま歌を練習してしまうので、そうすると「なんかうまくいかないな」となってしまうのです。
呼吸をしっかり知ることができればすべてが変わると言っても過言ではありません。なので私は最初に“呼吸を知るトレーニング“を薦めています。
実践!呼吸練習を習慣化する練習方法
ここから実践のお話に入っていきますが「口呼吸、鼻呼吸問題」のときにもお話した通り、慣れないと結局すぐもとに戻ってしまうのですね。上手くなるためには慣れ、つまりは習慣化が必要なのです。習慣化出来る練習方法を今からひとつお伝えしますね。
朝起きた時、夜寝るときは大体の人が寝転んでいます。立って寝ている人はあまりいないですよね(笑)
多くの人が仰向けで寝転んでいると思いますので、ベッドの横などにちょっと重ための本(広辞苑などをイメージ)を2〜3冊置いておいてください。朝起きたときや、寝る前に鳩尾(みぞおち)から下、おへそから上にその本を寝転がった状態で置きます。
足はだらっとしていただいても、膝を立てていただいても結構です。その状態で「ウ」の口にします。上の前歯に向けて息を「スー!」と当てるイメージで息をついてください。
息の音としては「ズー!」とZで聞こえるかたちになればOKです。そのときにお腹に置いた本を手でちょっとずつ下に押していきます。このようにして強制的にお腹をへこませていきます。もうこれ以上息ができないな、肺の中の空気がからっぽだとなったら口を閉じてください。そしてゆっくりでいいので鼻から息を吸って本をもとの位置に押し戻していきます。ここで元の位置を覚えておきます。これでしっかり肺の下部で息をしていることになります。
なぜ本を使うのかというと、本は重みがあるのでお腹の上がり下がりを感じやすいからです。もちろん手で押さえていただいてでもいいです。あくまで体感がわかりやすいという理由で本をおススメしています。
もしくは、以前お話した四つん這いのポーズですね。四つん這いになって同じことをやっていただくと重力によって内臓が下がるのでこちらもお腹のへっこみともとに戻るまでを体感する方法としてはおススメです。
これをしっかりできているのかを毎日チェックします。別に長くやる必要はありません。
毎日チェックすることが大切で、回数が重要です。毎日チェックするときは当然肺の下部の呼吸ができているか意識することになるので、その呼吸を意識した生活に自然となっていくのですね。
「習慣化」のコツとは?
ちなみに私は夏休みの宿題は8月31日にとりかかり、そこで7月20日の天気から調べるようなタイプです(笑)
なぜこのような話をしたかというと、人は練習時間をあらかじめ取ろうとするとほぼやらなくなりますということをお伝えしたかったのですね。
今日その時間がとれないとなぜか人は明日に今日の分もやろうとなるのです(笑)
それは意味がないのですよね。癖づけが大事なのでまとめてやっても意味がないのです。
毎日ちょっとずつが何よりも効果的。1週間に一回1時間やっても効かないです。
毎日1分やることで効いてきます。例えば仕事から帰ってきてから練習時間を取ると
「練習しなきゃ」という気持ちになりやらなきゃいけないことになってしまうので、私のおススメの練習方法としては“普段日常生活で絶対にやっていること”に組み込む方法です。
例えば、私の場合シャンプーしている間だけ腹式呼吸を意識してみるなどしています。
大体の方が毎日お風呂に入られていると思いますが、お風呂に入っている間にやろうとしたらダメなのです。『シャンプーしている間だけ』これが重要なのです。
お風呂に入っている間にやろうとするとたくさんやらないといけないとなってしまうので、
シャンプーしている間だけというわずかな時間であることが重要なのです。他にはお手洗いに行っている間とか、お皿を洗っている間とか。
あとオススメで私がやっているタイミングとしては、私は毎日YouTubeを見るのですが、広告が流れている間だけやるとかですね。広告が流れる時間なんてわずかで長くても30秒くらいですが、それでいいのです。要は隙間時間をいかに有効活用できるかによって歌の上手さが断然変わります。なので、毎日やることに組み込んでほしいのですよね。
YouTubeの広告の間、TV見るときはCMの間、そうやってうまく時間を作ったもの勝ちなのです(笑)
長くやる必要はなくとにかく細切れでいいのです。30秒やる、1分やる。これだけで全然変わります。習慣の力はとてつもないですよ。
継続は力なりなんて誰に言われなくても皆わかっているのです。でもできないのが人間なのです(笑)
(余談)ちょっとした時間を練習時間に!
これは余談ですが、歌うときの重心を下げる練習方法としてつま先立ちをしたりします。
それだけで足の筋肉にすごく力がかかって重心が下がりやすくなるのですね。
それだけでも歌には効果的なトレーニングになります。
これはよく生徒さんにも言いますが通勤時間の電車の中なんかでやってほしいですね。
この駅からこの駅まではつま先立ちをする。これをほぼ毎日やるだけでも十分効果があります。いかに日常に無理なくうまく組み込めるかなんです。
だから極端な言い方をすると、まず最初は長い練習時間をとらないでほしいです。
なぜならばやらなくなってしまうからです。やらなければいけないとなった途端、基本、人はやらなくなるのです。
体の仕組みを変えていくのに突貫的なことは通じません。やっぱり長期間必要です。右で使っていたお箸をいきなり左に持ち替えて使えますか?という話なのです。
ペンも同じです。右利きの人が今いきなり「左で書いてください」と言われてもすぐに上手くは書けないですよね。なぜかといえば“右に慣れているから”ただそれだけなのです。慣れているとどこにどのくらい力を入れて、どこの力を抜けばいいかバランスがわかっていますよね。
全部力が抜けていたらペンすら持てないですけど、手にかける力の配分が全部わかっているから字が書けます。自転車もそうです。力をかける瞬間とバランスを取る瞬間がわかるから乗ることができます。それと同じで、ずっと今まで右で書けていたペン、乗れていた自転車、急に書けなくなったり、乗れなくなったりしますか?という話なのです。
もちろんならないですよね。ということは呼吸も習慣にしてしまえば“一生もの”なんです。
だから一生ものを手に入れるわけですから一朝一夕というわけには当然まいりません。右利きの人が左手で字が書けないのは、変なところに力が入って入れなきゃいけないところに力が入ってないので書けないのです。でもどこにどんな風に力が入っているのか理解して、どこにどのくらいの力をかければいいか意識して毎日練習していたら書けるようになります。
それである程度書けるようになったらもうずっとその先も書けますよね。だから歌でもそれをやるのです。1週間に1時間自転車に乗る練習をしてもなかなか乗れないし、1週間に1時間左手で書く練習をしても書けない。それと一緒で毎日1分でも30秒でもいいからやることが歌の上達への一番の近道なのです。
「必ず毎日できる方法」を探る
呼吸の練習というのは癖を変えていくことなので、「必ず毎日できる方法」を探るということが私のボイストレーニングではまず最初にすることとしています。
なので私は生徒さんに最初に普段どういうルーティンで生活しているか、毎日やっていることは何かを必ずヒアリングをしています。
コーヒーを毎日飲む人なら、コーヒーを沸かしている間だけやるなど。必ず人は隙間時間を持っています。そこでやるのです。そうすれば練習時間をとらなくていいので続くのです。そして続くということはうまくなるのです(笑)
ここが最初に歌がうまくなるための一つのポイントだと思います。
これは呼吸に限らずではありますが、呼吸というのは大半は癖がついてしまっているものなので、こういった練習方法でしか変えることはできないんです。
高い声を出したい、滑舌をよくしたい、深い声を出したいなどのテクニックの練習と違って、呼吸の練習は体を変えていく練習なのでそこをできるようになる前にいきなり声を出すところから入るのは私の中ではナンセンスなのです。
まず呼吸を整えていく、そのうえで声を出していくということが一見遠まわりなようで一番近道になります。
最初の呼吸トレーニング「リップロール」
そして一番最初に呼吸のトレーニングとしてお教えしているのが「リップロール」です。
リップロールというのは下あごの力を抜いて息をしっかり流して唇を震わせることなのですが、息をちょっと強めに吐いて口をダラっとします。そして唇をかの有名アニメーションのアヒルキャラクターの声のような感じで震わせます。あの真似に近いです。プルプルプル…という感じですね。
子供のころからやり慣れている方もいますが、下あごに力が入ってしまう人、息が止まっている人はできないです。
まずこれが呼吸を整えるために必要な練習で、いい意味で口の力を抜く(脱力させる)のに良いので最初にやるのがこのリップロールになります。
映画やドキュメントなんかで歌手の方が楽屋とかでリップロールをしていたりします。
これは息がきれいに流れているかの確認、下あご、喉に変な力みがないようにするトレーニングなので、これをやった後は声が出しやすくなったりするからです。
まとめ
声を出さずに、前半でお伝えした練習方法の「スー!」の息で唇を震わせ、リップロールに変えて練習してみてください。鼻から吸ってリップロール。これがスムーズにできるようになって慣れてきたらほんの少しだけ声を乗せます。鼻歌程度でいいです。頑張って出そうとしないでください。音が出るということは声帯に当たっているということなので声帯のストレッチにもなります。
これも余談ですが、アナウンサーの方の練習方法でもリップロールは活用されていたりします。かならずいう文言ありますよね。おはようございますとか。これをリップロールを付けながら読んだりします。そうするといい意味で喉が脱力できて、息の流れがしっかりできるので声がきれいに響きやすくなったりします。
それこそ例えば友達とカラオケに行ったら正直少しでもうまく歌いたいと思いますよね?こっそりお手洗いに行ってリップロールしてみてください。それから歌うだけでだいぶ変わります(笑)
前に伝授したカラオケ中にこっそり強制的に腹式呼吸にできる方法「肩ロック」のようにこっそりできる実践方法はいろいろあります。
呼吸がきれいにできる=声がきれいに出るということなので、歌がうまくなる第一歩として腹式呼吸とリップロールはセットで是非やっていただけたらと思います。
この記事は私が書きました。
浦麻紀子。うらまきこ。
大阪府出身。
ボイストレーナー、話し方トレーナー、ビジネスボイスコーチ。日本ボイストレーナー連盟資格認定(JAVCERT)
プロアーティストの仮歌、コーラスサポート、NHKプロフェッショナルの流儀、テレビ朝日系全国ネット『坂上忍の成長マン』ハモり講座の指導などのテレビ出演、名古屋大学大学院医学系での学術集会でのセミナー、豊商事株式会社での電話対応セミナー、など多岐にわたり活動中。
・20年以上に渡りボイストレーニングを指導。
・3000名以上の指導歴。
・シニアインストラクターとしてボーカルトレーナーの育成、指導。
・講師、客室乗務員、面接対策、婚活、企業様向け研修やスクールでの講演。
・コミュニケーション能力向上研修、プレゼン研修。
・メジャーレコード、プロダクションへのプレゼンライブ等。
特に滑舌、表現力、説明力には力を入れている。
自身も3枚のアルバムをリリース。全国20箇所でツアー・ライブを500本以上。