ティッシュ・スマホを使って息の量コントロール!腹横筋を鍛える方法
今回で腹式発声については最後になります。前回は「腹式発声には姿勢も大事ですよ」というところで話が終わっていたかと思います。
前回の、腹式発声には姿勢も大事で話が終わっていた【声を出さない発声練習】について読んでいない方はコチラ↓
強制的によい姿勢をキープできる方法とは
自宅で野次馬のように首を伸ばす姿勢を心がけることももちろん大事ですが、強制的によい姿勢をキープできる方法があるのでそれをお伝えしますね。頭の後ろで手を組むんです。その時、肘が耳と同じ位置に来るようにします。この時点でかなり胸が張っている状態になりますよね。これだけでいいんです。
これをずっとやっていると疲れて肘が体の内側に入ってしまって肩甲骨が開いてきてしまいます。これを強制するために首の後ろ、頭の後ろに手を組んだ時の両腕の輪の中を通るようにつっかえ棒を差し込むんです。そうすると肩甲骨同士が近くなり肺が広がります。
肺が広がるということは息が入りやすくなるんですね。これはしんどくて何分も続けることはできないんですけど、これぐらいしっかりと肺って実際は広がるんだ!と思ってください。実際にこの姿勢で歌うことはないですが、それくらいの意識を持つことが大事なんです。
いっぺんやってみるとわかりますがものすごくしんどいです。耳と肘の位置を合わせるだけでも結構大変だと思います。この状態で声を出したり、腹横筋を出したりします。
インナーマッスルを使って息の量をコントロール
前回のティッシュを使っての練習
にもう一度立ち返りますね。最終目標を地面とティッシュが平行で5秒と言いましたが、最初から5秒はしんどくてほとんどの方ができないと思います。なので度数と秒数を比例させながらちょっとずつティッシュを息で持ち上げてみてください。例えばティッシュを吹いたときに45度しか持ち上がらない人は45度で構いません。ただ45度なら45度でまずは3秒キープしてください。要は度数が変わってしまうのが一番よくないんですよね。息の量が変わるということなので、声にバラつきがでてしまいます。だから度数をキープすることが大事なんです。
45度なら45度で3秒、60度なら60度で3秒、これをやってみてキープできないということはインナーマッスルを使って息の量をコントロールできていないということになります。45度と言われたら45度、60度と言われたら60度という風にティッシュの角度を狙って持ち上げることができないとだめなんです。つまりこれができるようになるということは息の量をコントロールできるようになるということですね。まずは現状インナーマッスルをMAXで出してみて、ティッシュを吹き上げてみる。これで現在の自分が出せる息の量と勢いを把握する。90度に対して5秒キープを最終目標に毎日練習。できない人は45度、60度、90度と徐々に上げてみることをやってみてください。
手やスマホやペットボトルを使った腹横筋の確認方法
そしてこのとき、腹横筋を確認します。ティッシュを両手で持っていると腹横筋が触れないので、ティッシュを吹き上げるのと同じイメージでZの発音(ズー)で息をはき出します。
まず両手をグーにしてください。このとき第一関節までの指の部分を腹横筋に押し当てます。しっかりと腹横筋が張っているとこのグーが押し返されます。これで腹横筋が出ているかを確認できます。
ただ、できれば手でやってしまうと姿勢的に肩甲骨が開いてしまいますので、スマホやペットボトルなんかを腹横筋に当てることをおススメいたします。中身が入ったペットボトルがよいかもしれないですね。中に水などが入っていると重石(おもし)になりますし、外圧をかけるとインナーマッスルが出ようとするので効果的です。肩甲骨がつい開いてしまうという人はこうしてペットボトルなどを使ってみてください。このとき軽く触る感じではなく、グッとしっかり押してみてください。ちょっと痛いと思うくらいがちょうどよく、この押す力を跳ね返すくらいに腹横筋をしっかり出せるように練習してみてください。これが一番効果的かと思います。
インナーマッスルを使ったリップロール方法
このようにいろいろな方法でインナーマッスルを出しながら息を出す練習をしていきます。
ここからまとめにはいりますね。
今度はこの筋肉を使ってリップロールをしていくんです。リップロールというのは下あごの力を抜いて息の流れを一定にする効果があります。リップロールとこれまでの練習をセットで行っていく、いうなれば上の歯車と下の歯車をうまくかみ合わせていく作業になります。この作業が一番大事になります。要は上だけ(喉周り)できていてもダメですし、下だけ(インナーマッスル)できていてもダメです。この二つがつながっていないと声というものはダメなんです。なので最終的な腹式発声のトレーニングとしてはまずしっかりとインナーマッスルを出すことを軸に置きながら発声をしていきます。ここでいきなり声を出すということを私はおススメしていません。まずは声を出さない息だけのリップロールからをおススメしています。息だけのリップロールをしながら腹横筋がしっかり出ているか確認します。これができたらこのリップロールに声を乗せていきます。これはご自身の好きな音の高さで結構です。さらにこれができるようになったら次は音階です。自宅に鍵盤がない、音階がよくわからないという人はできるだけ自分が出せる一番低い音から一番高い音までを一気にやってみてください。一気にやったほうが良い理由としては、息の流れが続けば、あごの力が抜けていて、しっかりとインナーマッスルを使えているので止まらずに低い音から高い音、高い音から低い音まで移行ができるはずです。
もし高い音で止まってしまった場合は、高い音のときに余計な下あごの力がかかってしまっているのかな?インナーマッスルがしっかり出せてないのかな?という目安になると思います。できるだけご自身が出せる範囲ギリギリ(できるだけ広いレンジ)の音階でやってみたほうが自分の苦手な音域が自分でわかるのでよいですね。
声は出さずにリップロール→出しやすい音を短音でリップロール→一番低い音から一番高い音までをリップロール
このように、まず声は出さずに息を乗せてリップロールだけ。次にご自身の出しやすい音を短音でだしていきます。そして最終的には一番低い音から一番高い音までを声を乗せてリップロール。ここまでを基本的に腹式発声の一番最初にやる練習と私はしています。
そして腹式発声の前段階としては、最初の方の記事でお話した腹式呼吸、内臓をあっためることがとても重要であるということ。そして前回、前々回でお話した肺を支える三つのインナーマッスル(腹横筋)をしっかりと出せているかどうかの確認。これは風船やろうそくを使って説明しました。
そしてしっかりと筋肉が出ている状態を確認できたら、まずは声を出さずに息だけでのリップロール。これができたら声を乗せてみる。声を乗せることに成功したら、ご自身の出せる一番低い音から高い音までをリップロールでラウンド(低→高、高→低)して出す。
ここまでがまず歌がうまくなるために最初にやるべき基礎トレーニングの一連になります。
そもそもリップロールができない人は
ただ、ここまで読んでいただいて「そもそもリップロールができないのですけど…」という方も多くいらっしゃると思います。そのような方向けにまずはリップロールができるようになるための練習についてこの後お伝えしたいと思います。
重複になりますが、本来リップロールをする目的としては、下あごの力をちゃんと抜いて息を一定に出していくこと。歌うときってフレーズ単位で歌っていきます、この息の流れが崩れると、言葉で出すと「おはようございます」みたいな感じになります。「おは」が強くなったり「よう」が弱くなったりバランスが悪いんですね。息でしゃべるので。なのでこれが「おはようございます」とちゃんと言えているということは、きれいに息が流れているよというサインというかイメージなんです。例えば話し方でも聞きづらい方というのは、息が止まっていたり、息の流れが一定でなかったりする方がほとんどです。息が真っすぐきれいに流れているというのがきれいなフレーズを作る大前提になるんですね。
例えば私はアナウンサーの方に指導させていただくこともあるんですけど、そういう方にはリップロールでしゃべっていただいたりします。原稿をリップロールで読んだりもします。「おはようございます(リップロールで)」こういうふうにして、まず力を抜いた状態でその言葉を言えるかどうかをやるんですね。それぐらい下あごの力を抜いて息の流れを統一するのに長けているトレーニングなので、歌う前にやっていただくとものすごく効果的です。楽に声が出せるようになります。リップロールのやり方としては、やったことのある人はすごく簡単なんですけど、やったことがない人だと果てしなく難しいんです。なぜならどうやってやればいいかわからないから。そのような方でもこれを一発でできる方法があるんです。なぜリップロールができないのかということをまず考えてほしいんですね。
まとめ、次回「ボベボベトレーニング」
下あごの力が抜けていて息の流れを一定にできればリップロールはできるということは下あごの力が入っていて息の流れが一定じゃないからリップロールができないんです。多くの方は息を吐くということは感覚的にできます。でないと死んでしまいますから(笑)ただ、下あごの力を抜くということが難しいんです。普段自分がすごく下あごの力が入っているなと感じながら生活していないと思います。勝手に入っちゃうんです。無意識に勝手に力が入っちゃうところを脱力するってできなくないですか?自分は力を入れているつもりがないから。力を入れているつもりがないところの力を抜くということは不可能なんです。なので感覚としてわからないんです。下あごの力を抜きましょうといったところで誰も抜けません。
そこで私が考えたのが「ボベボベトレーニング」です(笑)これは何かというと、上あごを強化するんです。単純に言うと腹話術の人形を思い浮かべてください。下あごが下がって声が出ていますよね。上は全く動かない。これが下あごに力が入っている、下あごが主導権を握っている口の開け方です。下あごが動いて上あごはそのままで口を開いていますね。こうなると下あご(動くとこ)というのは力をもちやすくなるので下あごに力がたまりやすくなる。私がお伝えしているのは最終的にワニの口の開け方(上あごを開ける)にしてほしいんですね。日常生活で上あごを開けている瞬間というのは、例えば厚めのサンドイッチを食べるとき上を開けていると思います。下だけ開けて食べる人はいないです。それを思い浮かべてください。口の開け方って緊張しているとき、「ちゃんと話さなきゃ…」って時ハンバーガーの口ではなく腹話術の口になっています。そうすると下あごに力が入りやすくなってしまう。ハンバーガーを食べる時の口ってどうなっているかというと、上あごが動いているんですね。下あごより上あごの力をつけていただきたいです。次回は「このボベボベトレーニング」を使ってリップロールができるようになるためのお話をしたいと思います。
この記事は私が書きました。
浦麻紀子。うらまきこ。
大阪府出身。
ボイストレーナー、話し方トレーナー、ビジネスボイスコーチ。日本ボイストレーナー連盟資格認定(JAVCERT)
プロアーティストの仮歌、コーラスサポート、NHKプロフェッショナルの流儀、テレビ朝日系全国ネット『坂上忍の成長マン』ハモり講座の指導などのテレビ出演、名古屋大学大学院医学系での学術集会でのセミナー、豊商事株式会社での電話対応セミナー、など多岐にわたり活動中。
・20年以上に渡りボイストレーニングを指導。
・3000名以上の指導歴。
・シニアインストラクターとしてボーカルトレーナーの育成、指導。
・講師、客室乗務員、面接対策、婚活、企業様向け研修やスクールでの講演。
・コミュニケーション能力向上研修、プレゼン研修。
・メジャーレコード、プロダクションへのプレゼンライブ等。
特に滑舌、表現力、説明力には力を入れている。
自身も3枚のアルバムをリリース。全国20箇所でツアー・ライブを500本以上。