【リズム感】歌の安定感を高める聴き方と練習方法3ステップを解説!

では、今回からリズムについてお話していきたいと思います。まず、みなさんが思ってい るリズムのイメージは結構偏っていると思っています。少し偏見があるというか、「こう歌えたらリズム感がある」とかではないんです。リズム感に対する一般的な誤解を解いていくところからお話できればと思います。

目次

音楽の基本要素の重要性

具体的に音楽として話をすると、例えばリズム、ビート、テンポがどのように相まって曲になっているのかっていう成り立ちを、作曲される方とか、楽器をされている方以外は正直考えていないと思います。なんとなく、拍子をとって歌うということは、リズムがあるのではなくて、ただ単に拍子をとって歌っているだけの話なのです。

リズム感がない方っていうのは、その1曲 に対してどのように曲ができているかとか、曲の一番根底の部分を理解して歌っていないんです。 これはなぜかというと、 どうしても日本ってカラオケ文化というのが強いんです。でもこれは、自分が歌うための周りの環境がお膳立てされている状態になるんですよ。だから、 ツーミックスになったカラオケで音がスピーカーから流れてくるし、ベースもドラムも全部一緒くたになっている。自分が歌うためのカラオケ、オフボーカルのものっていう言い方をしますけど、私はオフボーカルってあんまり言い方が好きじゃなくて、要は楽器だけのインストルメンタルですよね、なのでインストルメンタルという言い方の方がしっくりくると思っています。

どうしても「後ろの音が1個」って捉えがちの人が非常に多いです。それだと歌のリズム感は伸びません。 つまり、自分の好きな曲の、ドラムがどういうパターンで鳴っているとか、ベースがどういう風に鳴っているとか、どこで抜けているかっていうことを、その曲を聞いた時に聞いていますか?っていう話なんです。多分ほとんどの方がメロディーや歌詞しか聴いてないと思います。

メロディーとリズムの関係

リズムを学ぶためにはメロディーは究極の仕上げを加える、最後のスパイスだと思ってほしいんですね。それをすっ飛ばして、メロディーを最初に歌ってとか、歌詞をしっかり乗せてからリズムに入るっていうのは逆じゃないかなって私は思います。

日本の音楽文化とリズム感

和歌とリズム感の基礎とは?

日本人が1番馴染みのある歌っていうと、もう古今和歌集とか、百人一首とか、和歌なん ですね。要は大和の歌です。だから、日本人の中で歌っていうと、節回しが基本になります。

「たたたたた~たたたたたたた、たたたた~」って、百人一首を読むときの節がありますよね。あれが日本人の歌のベースになっているんです。なおかつ、そこには、変な言い方ですけど、テンポはないんですね。一定のテンポがないということです。

「タッタッ、 タッタッタ」とリズミカルには読まないんです。なんとなく雰囲気でこう、「たたたたた ~」と節回しでとらえてしまいます。その馴染みがどうしても強いので、その節回しの文化が発展したというか、その風潮が日本はとにかく強いんですね。 なので、ちゃんとビートを刻んで、テンポをとって歌うということが後付けになってしまう。私が思うには、日本で音楽教育を学ぶと、そういうところに必ず直面してしまいます。

なのでやっぱりリズムが弱い人が多いのではないかと。 日本における歌の歴史とか、刻み込まれてしまった遺伝子的なもの、それが日本人にとっ てはウィークポイントになってしまっているのがもったいないなと思います。例えば“わび”、“さび”の効いた、民謡とか、それこそ演歌ですよね。 もちろん、近代音楽になってからは、ちゃんとテンポがあって、リズムがあってとなって いますけど、 よくよく聞くと、演歌ってやっぱり節回しが非常に多かったりして、すごくゆっくり歌ったりしますよね。ある意味では後ろの伴奏関係なしに歌ってるところもなきにしもあらずかと思います。

そういうところがやはり日本の歌の代表とされるんですね。逆に、海外の人が演歌を聞いたりすると、すごいグルーブだって聞こえたりする時もあります(笑) 歌に対してリズムをしっかりとという考え方はやはりヨーロッパとかアメリカの方が土壌になります。特にアフリカ系アメリカっていう言い方をすると、ちょっと語弊があるかもしれませんが、そちらの方から発祥した音楽が、例えばソウルだったりします。 教会で歌うクワイヤーとか、何か目的があって、こう 1つになって、神に歌を捧げるとか、自分の今置かれてる状況を、魂や声にして、外に放出するっていう、“何か目的があっ て声を乗せている” ので、ベースにあるのが、メロディーではなくリズムなんです。

国の歴史と音楽的な遺伝子

これは、なぜかというと、ずっとずっと昔の話になりますけど、昔、イギリスが覇権をとっ ていた時代に植民地が多かったですよね。そして、その植民地の現地の人はどうしても安い賃金だったり、かなり過酷な労働条件や扱いを受けて働かされていた時代っていうのが事実としてありました。 そのような環境の中で、自分達が生きていくために、希望を見出すために、できることっ て、もう“ 叫ぶ”とかその“魂を声にする”とか、変な言い方かもしれないですがそういうこ とでしか発散できないというか、自分を鼓舞できないっていう、そこら辺にある、それこそ木を叩いたりとかして、そのリズムで、みんなで歌ったりして。だからアフリカ系の民謡とか民族音楽ってこうなんとなく音程があるようでないような、ただリズムだけがしっかり乗っている印象もあると思います。

これは元をたどれば木を叩いた音に合わせて、みんな声を出そうってだけの話だったんですね。決してメロディーや節があったわけではなく、ただ単にそのリズムに合わせて、みんなが「WAWAWA」って言おうとか。 そして、これで「元気出してみんなで一生懸命一緒に頑張っていこうね」っていう。 そういう歴史、遺伝子が基礎になって歌が成り立っているので、リズムをとるというところ がベースになっています。

順番として、ビートを刻んでるものがある、それに合わせてリズムをとる、そこに単に声が乗っている、その後でさらにメロディが乗ってきているような感じです。なので、例えば、そういうアメリカ系の音楽っていうのは、ラップがすごい上手な方が多いですし、ものすごくそれが、大衆音楽として認識されています。 今でこそ、深夜番組でラップのフリースタイルっていう番組ができたぐらいですが、日本では昔はやっぱりラップって1つの音楽として認められてないというか、「節がなければ音楽じゃない」みたいにとらえられていて、あんまり認知度がなかったですよね。

ラップをやっている方はたくさんいらっしゃったんですけど、サビまでのつなぎみたいな感じの扱いでした。で も、向こうのラップを聴くと、全曲終始ラップですよね。それが普通であったりして、なんかそういう土壌の違いっていうのが歌の受け止め方に大きな影響を与えているのかなと思います。 そういったところから、リズムを学びたい方は見ていったりすると、面白い発見がいっぱいあるし、リズム感がないからリズムをつけようって思った時に、例えば、 曲のどんなところを聴いたらリズム感がよくなるのかなって疑問も湧いてくると思いま す。

リズム感を養うためには?

生徒からもよくそれは相談を受けたりするんですけど、では、どういう曲がリズムがいいと思うかってことなんですよね。ただ先に答えを言ってしまうと、リズム感が良くなる音楽っていうものはないです(笑) 1回ラップを聴いてみようかな。どうやって音を取ってるいるのかな。後ろの音はどういう風に鳴っているのかな。そういう興味や聴き方の工夫が入口で、リズムを養っていくフェーズに入っていけると思うんですね。なので、ちょっと残念な話かもしれないですけど、この曲を聞いたら絶対リズム感が良くなるっていう曲はありません。 今まですごく好きで聴いてた曲とか、なんでもいいんですよ。

例えば米津さんのLemonがすごい好きで聴いていたら、Lemonのドラムのキックはどこで入ってるんだろう?キッ クっていうのはボンボンと聴こえる1番大きい低い音です。これはどのタイミングで入っているのかなとか。 ハイハットという、「シャンシャンシャンシャン」ていうドラムが細かく刻んでる音があ りますけど、これは、どういうパターンで入ってるかなとか。なので私はトレーニングではいつも、「曲をやりましょう」ってなった時に、10パターンぐらいでまず聴いてもらい ます。 「じゃあ、今はスネアだけ聴いてください」っていう聴き方をさせるんです。他は聴かなくていいです。これはとても面白いですよ。スネアだけ聴かせると、スネアって裏打ちが入ってたりするんで、要はリズムに直結するんですね。なので、じゃあスネアだけ聞いてみま しょう。スネアって「カンカン」と聴こえる音ですよ、って音を教えてどこで入ってまし た?って聴きます。これを正確に答えられる人は少ないんですね。要はそっちに耳がいかないんですね。やっぱりメロディーとか歌詞に耳がいってしまうので。それだとリズム感は良くなりません。

この後も、「では次はベースだけを聴いていてきましょう」というように、 全部の楽器を聴き分けさせるんです。そして、最後にメロ ディー、歌詞を聴かせるんです。

これが私の中では1番リズム感が育つ、養われる方法ですね。やっぱリズムの実態を知らないと、リズム感を養えるわけはないんです。 なので、まずその曲が成り立っていく構造っていうのをわかってほしいですね。だから、 カラオケ慣れしてる人はちょっと怖いんですね。音が1個になっているという意識になってしまっているので。バックグラウンドミュージックっていうのが1つになっているのではなく、いろんなものが合わさって1つの曲になっているという意識が持ちづらいんです。“合わさっている”という部分を全部端折ってしまうので。 この1個ずつを解明できるようになると、曲の聴き方がどんどん変わってくるんですね。どんな曲であっても、例えばそれこそ「チューリップ」であろうが「ゾウさん」であろうが ラップであろうが、最初にその音を聞いた時にメロディーを聴くんじゃなくて、後ろの音から聴くようになってくる。

後ろの音を聴くってことは、要はビートだったりリズムだったりが中心に並んでいるので、 必ず同じテンポで入れるようになったりとか、だんだん頭でわかるのではなく、体に身についてくるという。これがリズム感というものなんです。

リズム感を養うための聴き方と練習方法

3ステップにまとめると、

①どういう音楽を聴いたらいいかというものはない。興味のある音楽などなんでもいいから曲を決める。

② 歌の後ろに流れている演奏をできるだけ楽器のパートに分けて聴いてみる。そのときのポイン トはリズムとビートとテンポの違いをちゃんとわかって聴けるかどうか。

③最後にメロディーを聴く。

そうすると必ず新しい発見があります。今まで聴いてなかった、聴こえてなかった音が聴こえてくるんです。 リズム感のいい人というのは、後ろに鳴っている音がそれなりにはちゃんと聴こえて います。リズム感のない人は印象的なリフしか耳に残らなかったり。例えば「スタン ドバイミー」のベースの音なんかは有名ですよね。あれしか耳に残らない。でも、あの曲はリズムのトレーニングにはいいのかなって私は思います。嫌でもベースを聴く曲な ので(笑)

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