【腹式発声】歌が上手くなる3つのインナーマッスル+鍛え方解説!
今回から腹式発生についてお話したいと思います。まず「歌うときにはお腹から声をだせ」これはみなさんも一度は絶対に聞いたことがあるワードだと思います。じゃあ実際に声が出ているのは口からなのに、なぜお腹から声をだすと言われているのかがこの腹式発声の回を読んでいただくとよくわかると思います。
前回までに完結した腹式呼吸に加えて今回お話する腹式発声。この二つをある程度マスターしていただくと基本的には歌を歌ううえでしっかりとした声になっていくのではないかと思いますので、腹式呼吸の次のテーマとして腹式発声を選ばせていただきました。
腹式呼吸について読んでいない方はコチラ↓
「お腹の範囲」と「息を支える筋肉」
前提として前にも少しお話した「歌うときにお腹がでているのか、へっこんでいるのか問題」
復習ですがこの答えは「どっちも」が正解になります。歌うときにお腹はへっこむし、出ています。これについてもう少し深くお話したいと思います。
では、みなさんが考える歌うときの“お腹”はどこを指しますか?といったときにみなさんが想像されるのは胃より下の部分だと思うんですね。下っ腹とか。このあたりがお腹と認識されている方が多いと思います。ただ、ボイストレーニングでいうお腹っていうのは“胸の付け根(肋骨あたり)からもうお腹は始まっています。
下のお腹は足の付け根まで。ここまですべてが“お腹”だと思ってください。
なので、みなさんが思うより歌うときのお腹の範囲はものすごく広いんです。
腹式発声では「おへそから下〜足の付け根から上」を使う
では、腹式発声ではどこを使うかというとメインで使うのは おへそから下、足の付け根から上 です。ここを使えるかどうかで腹式発声ができるかどうかが決まると言っても過言ではありません。これはなぜかというと、肺に息が入って、声を出すたびに肺に蓄えた空気がなくなっていきます。そのときに肺を支えるための大きな筋力が必要になります。この筋力がないと「声がふらつく」と言ったりしますが、要は息の流れが悪くなるんですね。
なぜ息の流れが悪くなるかというと、息って支えてくれるものがないと自由自在に勝手にどこかにいこうとしてしまうんですよね。まっすぐきれいに出そうと思ったら、ちゃんと支える筋肉がないと息はまっすぐ伸びないんです。
例えば10の息を吸ったら、一気に10の息は吐きませんよね、たぶん10の息を吸ったら1,2と吐いていきますよね。そうすると体に残っている空気は8とか7とかになります。
こうして取り込んだ肺の空気は息を吐くたびに少しずつ減っていきます。
そのときにまだ肺に残っている息とういうものは他に誰か支えてくれる存在がないとすぐに外に出たがる習性があります。
なので残っている息が「ゆったり過ごせるイメージ」でこの後の話を聞いていただければ幸いです。
歌で「息が続かない」「ロングトーンが出ない」理由
歌でいうところの息が続かないということは、おへそから下、足の付け根から上がちゃんと使えていないということです。
ちゃんとロングトーンを出したい、息を伸ばしたいという人は特に今回の回はしっかり読んでいただきたいと思います。
これは腹筋とかのアウターマッスルの話では一切ありません。おへそから下、足の付け根から上の中側の筋肉の話です。
いわゆるシックスパックなどの腹筋は見て「すごいな!」というアウターマッスルで正直歌う時にはこの見た目の筋肉はほぼつかいません。
なので、歌が上手な人が筋肉ムキムキかといったらまったくそんなことはありませんよね?少し誤解を生むような言い方ですが歌うときに見た目の筋肉はどうでもいいです(笑)
なのでこの回を読んでいただくときには中の筋肉(インナーマッスル)だけ気にしてください。
中の筋肉(インナーマッスル)を意識する
先ほど腹式呼吸で徐々に息が減っていくという話はさせていただきましたが、肺にまず息をいれます。肺って言うのは内臓です。一番体の中にあります。この体の一番なかにある内臓に一番近い筋肉というのが深層筋肉(インナーマッスル)と言われるものになります。
内臓に近いんで、当然外からは一番遠いですよね。だから見えない筋肉ってことになります。
肺に息が入って、息が徐々に出ていく。その時に残っている息を支えるのに
一番遠い筋肉だったら支えづらいと思いませんか?ただそれだけの話なんです。
「肺に一番近い場所で寄り添っているからその人をすぐ支えられる」ということと同じですね。駆けつけるのにそばにいればいるほどすぐに支えられますよね。
なので、「インナーマッスルを使いましょう」となるんですね。
腹式発声のときに使う3つのインナーマッスル
腹式発声のときに使うインナーマッスルはいろいろあるんですが、簡単に代表的なものを紹介していきます。
まず、一番大きい筋肉が腹横筋です。これは人間の内臓すべてを支えている筋肉です。
なのでインナーマッスルに人格を持たせるなら「肺でも胃でもなんでも来い!」という筋肉のイメージです。筋肉の割合としても大きいです。割合が大きいからこそちゃんと使えたら威力も大きいです。小さい筋肉はちょっとトレーニングすれば動くようになりますが、筋肉自体が細いんで筋力が落ちるのも早いんですよね。腹横筋はしっかりと内臓全体を支える筋肉なので、ここを時間をかけてしっかり鍛えてあげると支える力が増幅しますので息が安定します。
これが一つ目の腹式発声に使うインナーマッスル腹横筋です。
二つ目は横隔膜です。これは膜と書きますが肺の下についている肺に一番近い内臓でもあります。正確には肺に一番近い“筋膜”です。膜でもあるし筋肉でもあります。
肺に一番寄り添っているインナーマッスルなのでよく使うんですね。つまりは一番息を支えやすいポジションにいるインナーマッスルです。
次に背中の方に行きますけど、横隔膜の後ろの方に全体的についている筋肉(背筋)が多裂筋です。ざっくりとここでは背中の筋肉だと思ってください。
ここも、肋骨の間に入っている筋肉なので肺に近いです。なのでここも息を支えやすいです。
この三つが腹式発声のときによく使うインナーマッスルになります。この三つの筋肉を歌うときに使えるようになったら声が爆発的によくなります。
インナーマッスルの鍛え方とは?
ここがポイントですが、外見の筋肉を鍛えるのとはまったく違うということです。
よく生徒さんからも「筋トレなどした方がいいんですか?」という質問をいただきますが
「ある意味では筋トレですが、いわゆるアウターマッスルを鍛える筋トレは必要ないです」とお答えしています。
ではどのような筋トレが必要になるかというと、単純な話“内臓を動かす筋トレ”なので“呼吸とセット”で行う筋トレになります。これが有酸素運動、無酸素運動にわかれるところにもなります。有酸素運動ということは肺に息を入れて出して、その間に筋肉を休ませます。
息を支えるための筋肉を鍛えたいわけですからトレーニングは当然息が必要になります。
私が呼吸が大事ですよとお伝えしているのはそこなんです。
呼吸とセットで行わないと無酸素運動になってしまいます。無酸素運動は外見の筋肉に効くので歌のトレーニングには必要ないですとなるんですね。
例えばバーベルなど持ち上げるときとかは大体息が止まっていますよね。重たいものを持つときはたいてい息が止まると思います。こういった筋トレが無酸素運動になりやすいので中の筋肉には効かないんです。バーベル持ち上げるときに息を「スー!」と吐きながら持ち上げる方は少ないと思います(笑)
逆に言うと、息を吐きながらやれば中の筋肉に効くということになります。
このように筋肉の仕組みを知っておくと歌の力はとても育てやすくなります。
腹式発声で使う筋肉は内臓に近い筋肉になるので、内臓が動いて息がセットになっている筋トレの方が効果的ですというお話でした。
歌うときには、お腹でる?、へっこむ?
では歌うときにはお腹がどうなっているのか自分で確認したい場合について次はお話します。歌う場合においてのお腹の範囲はすごく広いので、「肺に息が入って、徐々に外に出ていく」部分を一番実感したいですよね。これを一番感じられるのはみぞおちから下、おへそから上になります。
肺から息が出ていくと、このみぞおちから下、おへそより上の部分がへっこんでいきますのでこれが「歌っているときにお腹はへっこむ」ということになります。ただ、息を支えるには筋力が必要なのでおへそから下、足の付け根より上の筋肉を使います。なので声を出しているときはここは張っている状態になります。そうなると「歌うときにお腹はでているということにもなる」となります。
だから「歌うときにはお腹の下に力をいれましょう」と言われるのはこういう仕組みがあってのことなんです。
歌うときにお腹が出るのは筋肉を使っているからで、へっこむのは空気が出ていくからと考えてください。
なのでどっちもなんですね。歌うときにお腹は出るし、へっこみます。ただそのお腹に対しての認識を歌う場合のお腹に変えていくのが腹式発声をマスターするうえでの第一歩になるかなと思います。
こうして細かく仕組みを知っていくと、自分が声を出したときに「お腹だけへっこんでいるな」という人は腹式呼吸はできているということになります。ただ、「筋肉は出てないな」となったら腹式発声はできていないかもしれません。これで自分でチェックすることができます。内臓って直接見えないので、息を使って、筋肉を使って内臓の動きを可視化していくんです。私がパッと見て腹式呼吸ができているか、腹式発声ができているかどうかがわかるのもこの体の動き、内臓の動きを見ているからです。これが自分でできるようになったらとてもいいですよね?正解がわかるので。前回までの記事を読んで、実践していただいてこれが腹式呼吸かとわかったら、この状態でしっかりおへその下から足の付け根までの筋肉も張っていたら腹式発声も一緒にできているなとわかります。この領域にいきついて練習していただくとだいぶ声はよくなっていくと思います。
まとめ
まとめると最初にみなさんが壁にぶち当たる“歌っているときにお腹は出ているの?出ていないの?問題”これをしっかりと理解して人に説明できるようになることが腹式発声で歌えるようになるためにものすごく大事だということです。これをちゃんと理解しているか、理解していないかで腹式呼吸同様に解決策のアプローチも変わってきますので是非この機会に理解を深めていただければと思います。
インナーマッスルを感じられる「風船を膨らませる」「ろうそくの火を吹き消す」とき
では、せっかくなので最後にインナーマッスルを日常生活の中で使っていることを感じられるシチュエーションについてお話しますね。
これの代表的な場面が、風船を膨らませるとき、あとは誕生日ケーキのろうそくの火を吹き消すときです。このときインナーマッスルは思いっきり張っています。
このふたつの共通点はなんでしょう?まずは一点に焦点を当て息を出すというところですよね。そして次がものすごく大事で、それは口がパンパンに張っていることですね。
この口をパンパンに張っている状態というのがすごくおおきなポイントになります。
それは勢いをつけるために体の中の空気をパンパンにしておいて威力を出すためです。
口をパンパンに膨らませなくてもろうそくの火は消せるかもしれないですが、ちょっとしんどいと思います。この勢いによる威力を出すためには力が必要なのでインナーマッスルを使うことになります。
100円ショップなどでも売っていますので買ってきて是非風船を一回膨らませてみてください。お腹の脇の部分がすごくかたくなるのがわかると思います。そしてこれがお話した腹横筋です。
これ、以外と膨らまない方もいらっしゃるんですよね。インナーマッスルが少ない、筋力がない人は風船が膨らみません。これ女性に多いんです(笑)
余談ですが、下っ腹がなんか出てきたなという人の多くの人、パーセンテージとしては半分くらいの人がこれに当てはまるんじゃないかなと思うんですけど腹横筋の力がなくなっただけなんですよ、太ったわけじゃなくて(笑)
なぜかというと年齢をを重ねれば外の筋肉同様、インナーマッスルも衰えてきます。
腹横筋は内臓全体を支える筋肉でしたよね?なので支える力が弱くなって内臓が下がるんです。下がった内臓は足の付け根のところで止まりますよね?そうすると下っ腹がでいるように見えるんです。だから実は内臓が出ているのがお腹が出ているように見えるだけということもあるんです。
腹横筋をしっかり鍛えている方は、常に内臓が元々の位置にあるということになりますので年齢を重ねても下っ腹が出ていない方は多いと思います。
YouTubeなどで「下っ腹」「ダイエット」などと検索してみてください。
そのときのダイエット方法は腹横筋にアプローチしたものだけだと思います。
例えば、寝っ転がって膝を立てます。そのままお尻を浮かせます。そうするとおへそのちょっと横の筋肉にすごく力が入っているのがわかります。腹横筋を動かすことはこの筋肉を動かすのにすごく効果的なんです。このように下っ腹へっこむダイエットで腹横筋を使っているものを紹介されている方はすごく多いですし、実際に下っ腹はへっこみます(笑)
スタイルキープしたいかたも是非この腹式発声はやってもらえるといいかなと思います。
この記事は私が書きました。
浦麻紀子。うらまきこ。
大阪府出身。
ボイストレーナー、話し方トレーナー、ビジネスボイスコーチ。日本ボイストレーナー連盟資格認定(JAVCERT)
プロアーティストの仮歌、コーラスサポート、NHKプロフェッショナルの流儀、テレビ朝日系全国ネット『坂上忍の成長マン』ハモり講座の指導などのテレビ出演、名古屋大学大学院医学系での学術集会でのセミナー、豊商事株式会社での電話対応セミナー、など多岐にわたり活動中。
・20年以上に渡りボイストレーニングを指導。
・3000名以上の指導歴。
・シニアインストラクターとしてボーカルトレーナーの育成、指導。
・講師、客室乗務員、面接対策、婚活、企業様向け研修やスクールでの講演。
・コミュニケーション能力向上研修、プレゼン研修。
・メジャーレコード、プロダクションへのプレゼンライブ等。
特に滑舌、表現力、説明力には力を入れている。
自身も3枚のアルバムをリリース。全国20箇所でツアー・ライブを500本以上。