【発音感情が伝わる歌い方】50音の特性を詳しく解説!話し方も向上
歌が上手いを紐解くと「息」なんですという話を前回させていただきました。
前回の記事を見ていない方はこちら↓
感情が伝わる歌い方、話し方のテクニックとは?
もうひとつ感情がしっかり伝わる歌い方、話し方のテクニックがあります。それはいかに50音の特性を知るかということです。これがすごく面白くて50音のひとつひとつに表情があるんです。あいうえお、かきくけこ、それぞれを人だと思ってください(笑)50人のクラスメートのイメージです。それぞれが特性を持っていて、ひとりひとりは違うので一緒くたではないんですね。
50音それぞれの個性
それぞれの行ごとに人でいう、ちょっとおとなしい子とかちょっとやんちゃな子みたいにそれぞれの個性があるんですね。それを知っておいた方が伝えるときに一瞬にして伝わるんです。たとえば“「あ」さん“がいたとします。「あ」さんがどんな人ですか?と聞かれた時に個性も特性も知らなかったら話のしようがないですよね。「うーん、、普通の子ですけど。。」くらいしか言えることがないと思います。でも、「そうですね「あ」さんって上あごをしっかり開いた状態で舌が下の歯に付いてて、さらにだらっと力も抜けていて、ちょっと大きめなあくびをした感じだから口の奥はしっかり開いたすごく声の通りの良い子です」って言ったときには「あ」さんの特性がすごくわかりますよね?なんか「あ」さんすごいなって(笑)つまりは、そういうことなんです。
個性を知ったメリット
50音それぞれの特徴を知ると、 “発音” “発声” “滑舌”がものすごくよくなります。聞き返されるとか、もごもごしたりとかといことが完全になくなります。それくらい50音の特性を知るということは大事なんです。
存在しない発音とは?「わ」の場合
例えば、「わ」「を」ですね。ちょっと誤解を招く言い方を敢えてしますけど「わ」と「を」という発音は存在しません。でも「わ」も「を」ありますよね?ってこれを聞いたら皆さん思いますよね。でも存在しないんです。これはなぜかというと組み合わせだからです。では何と何を組み合わせているかというと「わ」なら「う」と「あ」の組み合わせです。だから「う」さんと「あ」さんが一緒にいたら「わ」さんになるだけなんですね。
だから「わ」さんが存在するわけではないんです。「う」さんと「あ」さんが存在するだけなんです。
なので、「わ」って言おうとすると伝わらないんです。「うあ」って「う」と「あ」をつなげて速くと言うと「わ」になるので、「わ」という言葉を出したいときは必ず「う」の口から入ってくださいとなります。
具体例で確認
具体例を出すと今井美樹さんの『PRIDE』の出だし、「私は今~」で歌いだしが「う」の口にならない人は「あたしは今~」になってしまいます。「う」さんより「あ」さんが強くなって「あ」さんしか残らなくなってしまうんですね。口回りの口輪筋や表情筋が使えていないひとは「あたし」の発音になってしまうんです。「あたし」って日本語としては存在しないですよね?俗語としては存在しても美しい日本語としては存在しません。
きっちり話すときには「あたし」は使わないと思います。必ず「う」の口から入って「わたし」と発音されているはずです。
英語のにも通ずる発音
これは英語にも通じる部分です。要は、日本人が苦手とされる「L」と「R」の発音ですね。「R」の発音をするときには「う」の口から入って舌を巻いて発音します。そのまま「レストラン」と言ってしまうと「Lestaurant」で「L」の発音になってしまうので、「ゥレストラン」と発音しないと本来の正しい「Restaurant」にはならないんです。
これと同じで「わ」も「う」と「あ」の組み合わせなので、ちゃんと「う」が言えていたら正しく「わ」と言えるんです。こうやって美しく響くための特性を知ると、PRIDEなら頭の「わ」に注目して「う」からちゃんと言おうと思いますよね。だから「私」って言葉が聴き手に伝わるんだなと。試しにこの歌をご存じない方も検索などしていただき冒頭部分を歌って比較していただくと、ちゃんと「う」を言わないと「あたしは今~」に聞こえてしまいますが、「う」をしっかり言うと「わたしは今~」と美しく響くことがわかっていただけると思います。
存在しない発音とは?「を」の場合
「を」も同様です。「う」と「お」の組み合わせです。なので「うお」と発音するときれいに響きます。PRIDEの次のフレーズ「南の一つ星を~」も「う」をしっかり発音しないと「南の一つ星お~」になってしまい一気に響きにふくよかさがなくなってしまいます。たった「を」一文字でも「う」から入るか入らないかで言葉の伝わり方はこれだけ大きく違います。ちゃんとした「を」を発音することでちゃんとした文節(アーティキュレーション)を聴かせることができるので言葉の伝わり方が大きく変わるということですね。
50音それぞれの個性まとめ
なので50音というのはこのようにそれぞれがそれぞれの特徴を持っているんです。
それを知れば知るほど言葉の威力も高まって、相手に伝わる速度も早くなります。
結果、歌の感情が相手に伝わる速度も速くなり感情を感動に変えることができるというわけですね。
そうなると勘のいい方はもう気づいてらっしゃるかもしれませんが、同じように「わ」さんが存在しないように「や」さんも存在しないんです(笑)
「や」さんは「い」さんと「あ」さんが一緒にいたら「や」さんになるだけです。だから「や」の発音の時は「い」の口から入るということですね。「あ」の口から入らないでください。どうしても「や」だと母音が「あ」なので「あ」が強くなりがちなんですがそこは「いあ」を意識して発音していただければと思います。
なので、そういうことを知って発声しているかしてないかだけで全く別の歌になります。歌詞もただの50音の羅列ではなくて、50音ひとりひとりに個性や特徴があって集まったときにどうなるかということです。例えば、母音が重なる言葉って聴感としてだらっとして聞えるんですね。歌詞によくある「あなた」、母音でいうと「あああ」ですよね。滑舌の悪い方が「あなた」と発音すると「ああた」に聞こえてしまいます。
なぜそうなるかというと、「な」の特性を知らないからなんです。「な行」の特性は何かというと口は閉じてないけれど、舌は上あごに付いている状態から始まります。つまりは
ゆっくりいうと「ん(n)な」になりませんか?頭にnが入りますよね。だから軽く「ん」を入れてあげると「な」ってしっかり伝わりやすいんです。
具体的で確認
これも歌に置き換えると、松田聖子さんの『あなたに逢いたくて~Missing you~』という歌のサビ「あなたに~逢いたくて~」もそのまま「あなたに~」と歌うとだらっと聞こえます。「あんなたに~逢いたくて~」と歌うと「あなた」ってはっきり聞こえて歌が伝わります。だからやっぱり歌というものは“言葉を聴かせるもの”なのでこうやって言葉がひとつづつ精査されているとしっかりと伝わります。それぞれの特性を知ったうえで、どのパーセンテージでこの言葉の特性を使うかが大事なんですね。
ここはさらっと歌いたいなというところは50音の特性をそんなに出さずに、クラスメートのイメージでいえば協調性を持ってみんなに馴染ませておこう!みたいに敢えてするとか。ここはバッと前に行きたいなというときはその特性を前面に出して目立ってしまえばいいんです。その特性を知っていないとその出し引きはできませんよね。なので監督の感覚に近いかもですね、それぞれの個性と特性を知ったうえでという意味では。「今はみんな一致団結して守りに入るぞ!」とか「今は攻めのタイミングだからAとBで点を取りに行こう!」みたいな。そのとき監督がその特性と個性を把握していなければ的確な指示はだせませんよね。把握していないままだったらただ感情論で全員で攻めようみたいになってしまいます。それってどうなの?って思いますよね。つまりこれが歌で言う“ひとりよがりの歌”なんです。これは50音の特性を知らないからそうなってしまいます。
50音の特性を知るから次のステージへ行ける!
多くの人が好きなアーティストさんの歌い方を真似することでなんとなくできていたりもしますが、こうやって理論的に50音の特性を知ることでより気持ちを乗せやすくなりますし、歌っていて気持ちいいと思います。要は「気持ちの乗せ具合の具現化ができる」ということですね。これを知って発音するのと知らないで発音するのでは歌うときに全然違うのでこれを機に是非意識していただければと思います。
有名音楽プロデューサーの方が昔TV番組か何かでおっしゃっていましたが、自分たちの仕事というのはアーティストが抽象的なこと、例えば「何かここはほわっとした気持ちなんだよなぁ」とか「ここはピリっとしてて、でもここは切ない感じなんだよなぁ」ていう漠然とした感情を具現化することだと。感情の具現化という考え方は本当に素晴らしいと思い感銘を受けました。一見ちょっと無感情な感じを受ける方もいらっしゃるかもしれません。作業的に情熱を冷静に分析するということでもあるので。感情を出して怒ったり、泣いたり、笑ったりということを冷静に分析するってなんか冷たい感じがすると感じる方は少なくないと思いますが、感情という抽象的なものを音楽で表現したいとなったきに具体的な方法でしか具現化はできません。
皆さんが“気持ち”を伝えたいときって自分が伝えたつもりではだめで、相手にちゃんとどう伝わったかが大事ですよね。そこに行きつくためには100%でなくても、仮に80%だとしても相手にちゃんと伝えたいという気持ちを自分で具現化できないといけませんよね。
そう考えていただけると歌を伝えるということも同じなんです。
この感情を冷静に分析する力というものは私は「冷静と情熱の間」と呼んでますが表現において非常に大事なスキルだと思っています。
感情が伝わる歌へ到達するまで継続!
なので今までお話したような基礎的なトレーニングを毎日短い時間でも続けながら、こういった50音の特性も考えることを“癖”にすることが重要なんです。癖になったらステージでも自然とその癖がでるようになるので。
つまり癖になるところまでいけば、感情で歌ってもいいんです。癖になってないのに気持ちが先走ってしまうと“ひとりよがりの歌”になってしまうということですね。そうなると歌っても人には伝わりずらいよという話です。
いかにちゃんと歌を伝えるための癖を体にしみ込ませられるかでステージのパフォーマンスも大きく変わってきます。その準備ができていない状態でいきなり感情を歌で表現するということは正直無理です(笑)
普段から準備していないのに喋りがうまいからと言って本番のプレゼンが成功するビジネスマンはそうそういらっしゃらないと思うんですよね。歌もそれと同じです。普段から歌うための体を作っておけるか、伝えるということを意識しているかといことなくして歌っても人には伝わらないということです。
毎日歯を磨くことを続けていけば歯の磨き方忘れることがないように、字を書けるようになったら書き方を忘れないように、どうしても癖の植え替えなので時間はかかりますが一度癖にできたらそれらと同じで“一生もの”です。例えば声量に自信がない方でも発音がクリアなだけで相手には伝わります。歌に限らずコミュニケーション、仕事においても必ず良い効果があると思いますので今回の「わ」や「を」を普段から意識していただくだけでも十分な癖の植え替えになっていくと思います。是非「相手に伝える」ためのスキルとして癖にして損は絶対ないので今日から実践していただければと思います。