【リップロール上達】ボベボベトレーニング・母音法トレーニングとは
前回の続きになりますが、今回はリップロールがどうすすればできるようになるのか?についてお話します。
前回の記事を見ていない方はこちら↓
そもそもリップロールとは?
発生練習のリップロールとは、唇を震わせることで、唇の動きを練習するためのトレーニングです。これは歌唱や楽器演奏の練習の一環として行われ、口の動きや発音を向上させることを目的としています。
リップロールの発生練習は、口の筋肉を強化し、正確な発音や音の制御を向上させる効果があります。これは音楽や歌唱の分野だけでなく、スピーチやコミュニケーション能力の向上にも役立つテクニックです。
リップロールのコツ
まず前回もお話しましたが、下あごより上あごの力をつけていただきたいです。上あごよりも下あごの力の方が強いから下あごが先に発動します。こっちのほうが使いやすいし、使い慣れているし、力もあるからです。
これを変えていかないといけません。そのためには、下あごの力より、上あごの力を育ててあげる必要があります。上あごの力の方が強くなれば口を開くときに上あごから開くようになります。実際、歌い手さんって常にしゃべっているとき上の歯が見えていたりします。ただ一般の方で前歯が見えるようにしゃべる癖がついている方はほとんどいません。
ボベボベトレーニングが有効な理由・練習ポイント
そこで前回の記事で少し触れた「ボベボベトレーニング」の出番になります。
「ボベボベトレーニング」は単純です、「ボ」と「べ」をいうだけです。
バ行にしているのにも理由があります。それは声帯に軽く当たる言葉だからです。
「あ行」や「か行」は声帯にしっかり当たります。「ば行」は声に出していただくとわかると思いますが少し力が抜けた感じがしますよね?なのでウォームアップに最適なんです。
いきなり声帯にガっと力をかけるとしんどいので、まず、準備体操としてゆっくり筋肉を動かすことが大事。運動前のストレッチと同じです。
「ハッハッハッハッ」と「は行」で発声練習しているのを映像などで見たりしたことがあると思いますが、あれも「は行」が声帯に軽く当たる言葉だからです。
このように「は行」でもいいのですが、私はなるべく声帯に負荷がかからない「ば行」を選んでいます。これが「ボべ」の理由です。
それでは実際のやり方に入っていきます。
まず「ボ」のときはそれこそ家でTVをぼーっと見ているときのように顔の筋肉をオフにします。
逆に「べ」のときに筋肉をオンにします。
「ボ」は脱力したいからですぐにイメージがつくと思いますが、なぜもう一方は「ば」行の中で「べ」なのかというと母音が「え」だからです。「え」の発音をするときに多くの日本人は口が横に開いてしまっています。
横に口を開いて、「え」の発音をすると首や肩に力がかかりやすいんです。
なので、「え」の発音時も力をちゃんと抜いていくために「べ」を選んでいます。
このトレーニングのポイントとしては、「ボ」の時には口の筋肉を完全にオフ、「ベ」のときにオンにするのですが「ベ」のときに上の歯が全部見えるように上に口を開きます。
横に口を開くと上の歯は全然見えないんですが、上に口を開くと上の歯が見えます。
上の歯を見せようとして口をひらくと頬骨に「大頬骨筋(だいしょうこつきん)」という筋肉があるのですが、ここが上がります。
ぐっとこの筋肉をあげると視野が狭くなると思います。そのくらい頬の筋肉を持ち上げます。そうすることで初めて上唇より上の表情筋が動くんです。表情筋が動くということは上あごが動きやすくなります。
ボベボヘトレーニング→表情筋向上→リップロール上達→声がきれいに出せる!
リップロールが苦手な方はこの上あごより上の筋肉がほとんど動いていないと思います。
なので、表情筋をつかうということも歌がうまくなる、声がきれいに出せるひとつの方法なんです。たとえばパフォーマンスとして声楽の方々が目を見開いて歌ったりしますが、あれはパフォーマンスではなく目の周りの筋肉の奥に上あごを引き上げる筋肉がついていたりするので眉毛をあげたりして目を見開いて歌ってらっしゃったりします。
このように表情筋は“可視化できる筋肉”ですよね。ちゃんと動いているか確認できるので表情筋のトレーニングはやったほうがいいんです。
話は戻りますが、そういった小さな表情筋を動かせるようになるためにもまずは、「ボ」と「ベ」で顔の大きな筋肉を動かせるようになる練習として「ボベボベトレーニング」を私は勧めています。では実際にトレーニングに入りましょう。
ボベボベトレーニングのやり方
「ボ」と「ベ」を連続して発声します。
このときに下あごの力が抜けているかが非常に大事なポイントです。
「上の歯が見えていて、下あごは動かない」これが正しい状態です。
ボールペンなどを自分の下あごの先に当てて「ボベボベボべボべ」と発声してみてください。これでボールペンがほとんど動かなければOKです。このようにあご先に何かを当てる(指でもOK)とチェックの方法としてはわかりやすいです。
もしくは、鏡を見ながらティッシュや紙などで鼻から下を隠してください。これで無表情のまま「ボべ」と言えていたらアウトです。ちゃんとできている場合は「べ」の時に表情筋が持ち上がるので表情が自然と変わります。
目が大阪のビリケン様のような表情になるはずです。
一回目の「ボベ」から100回目の「ボべ」までクオリティを落とさないようにします。
クオリティとはちゃんと「べ」のときに上の歯が見えているかということです。
数回だったら誰でも言えます。これをソルフェージュに合わせて「ボベボベボべボエボべボ~♪」と私のトレーニングではやります。
※ソルフェージュとは、音階や音程を歌ったり、音符で表現したりする訓練法です。通常、「ドレミファソラシド」などの音階の音を用います。
出来ているかは筋肉疲労で確認!
頬骨の筋肉がとんでもなく痛くなります(笑)でも痛くなるということはちゃんと筋肉が使えている証拠です。痛くならないということは全く効果がないということです。
前歯が全部見えないといけないのですが、日常でなかなかそこまで見えるシチュエーションはありません。本当に大声で笑ったときくらいだと思います。なのでビリケン様の表情からわかるように一瞬ではありますが「べ」のときは大爆笑しているときの顔に近くなります。
最初はほとんどの方ができないと思います。まだ上あごの筋肉がないのでだんだん頬の筋肉が上がらなくなってしまうんですよね。
普段使っていない筋肉なので最初はできなくて当然と思って、ゆっくり、ただ上の歯は全開で見えるように「ボ、ベ、ボ、べ」とやっていただければと思います。
徐々にできるようになったらすこしずつスピードは上げていくことができると思います。
自身の得意・不得意な音を知る
ただ実践で歌うときは「ぼ」と「べ」以外に色んな母音が声帯にあたります。どの順番で母音が来るかもわかりません。
今からお伝えするのも大頬骨筋のトレーニングです。「あいうえお」と言ってみてください。このときほとんどの方が上の前歯が見えません。これを「あ」と「い」と「え」のときには前歯が見えるようにしていただきたいんです。この三つの母音の時に前歯を見せるようにした「あいうえお」を早く言うだけで大頬骨筋はものすごく動くのでよいトレーニングになります。「え」でほとんどの人が大頬骨筋があがらないんです。ということは歌の中で「え」で声が固くなったり、飛びずらくなったりするということですね。なので、アーティストさんにもよりますが苦手な母音、得意な母音をプロの皆様は自覚されています。
例えばロングトーンでパーン!と出したいところで、もし「い」母音が苦手の場合は歌詞でそこに「い」母音をはめなかったりします。やはり口の開け方や、顔の筋肉を使ったりして発声するので自分が発声しやすい音に変えてしまう方は多いです。
みなさんも同じ音の高さなのに「あ」だと出しやすいのに「い」だとだしづらいとか、一番の歌詞サビの最後の部分の高い音では出しやすいのに、二番のサビの同じ部分では出しづらいみたいなことがあると思います。それは完全に母音の得意、不得意の問題なんです。
そういうところに気付けると意識ができるようになるのでこのトレーニングで顔の筋肉も緩みやすくなってくると思います。
より実践的な練習「母音法トレーニング」
トレーニングを続けていくと「あいうえお」で苦手な母音がなくなります。そのためには「あ」「い」「え」のときにしっかり大頬骨筋を使うようにすると下あごの力の脱力になってこの練習もリップロールができるようになるには効果的です。
他にも「あいうえお」と言うだけでなくて母音法というトレーニングがあります。
母音法トレーニングとは
「あいうえお」の「あ」を一番最後に持っていって「いうえおあ」と発音します。次は、頭の「い」を最後に持っていき「うえおあい」、次は「う」を最後にして「えおあいう」、最後に「え」を持ってきて「おあいうえ」、これをワンセットにします。
「あいうえお」「いうえおあ」「うえおあい」「えおあいう」「おあいうえ」と連続で発音します。そのときにちゃんと「あ」と「い」と「え」で前歯は見えているかがここでも大事です。もちろんこのワンセットを早く言うだけのトレーニングもありますが、顔の上の筋肉を使いたい、下あごの力を脱力したいときは「あ」「い」「え」でしっかり頬の筋肉を上げます。
これをまずは一息で言えるかです。リップロールの練習には「母音」に特化した練習が必要になります。まずはゆっくりでいいので「あいうえお」「いうえおあ」「うえおあい」「えおあいう」「おあいうえ」、これらですべて頬の筋肉が上がっているか鏡を見るか、あご先にボールペンなどを当ててボールペンが動かないようにして、確認しながら行います。しっかりと筋肉を使えていると頬がじんわりと痛くなってくると思います。
「あいうえお」「いうえおあ」「うえおあい」「えおあいう」「おあいうえ」の発音は最初は噛んでしまったり、一息で言い切るのは大変だと思いますので途中で分けていただいて結構です。「あいうえお」「いうえおあ」、「うえおあい」「えおあいう」「おあいうえ」という風に切って練習してみてください。このように「ぼ」と「べ」だけだとどうしても「お」と「え」しか母音が出てきませんので、母音法で歌により近い発音に近づけていきます。これをできるだけ1回目から100回目までなるべくクオリティをそろえられるのが理想です。重複になりますが最初はゆっくりでいいです。慣れてきたら一気に「あいうえお いうえおあ うえおあい えおあいう おあいうえ」と練習してみてください。ワンセットを2.5秒~3秒くらいで発音しきれたらいいと思います。
ちなみに練習回数というより、低い音から高い音までこのワンセットができることが重要です。全周波数に対して柔軟性をもって顔の筋肉を使いたいのでどの音でもいいので単音で「あいうえお いうえおあ うえおあい えおあいう おあいうえ~♪」と低い音(地声)から高い音(裏声)までやってみてください。自分が出せる一番低い音から、一番高い音までの間に5パターンくらいの音の高さで練習できるとよいかと思います。
ただ、例えば低いところは「お」の声が通るのに、高いところでは「お」の声が通らないみたいに自分で苦手な音域と発音がわかるセルフチェックにもなりますのでできるだけいろんな自分の出せる音の高さで行うのが一番よいです。
この練習を続けていくうちに大頬骨筋が柔らかくなりますので、リップロールしたときも下あごの力に頼らずに楽に息の流れをキープしながらできるようになります。是非「ボべボべトレーニング」ができたらこの「母音法トレーニング」も実践してみてください。
最後の合わせ技、リップロールも合わせてみる
最後に、これもできるようになったら「あいうえお いうえおあ うえおあい えおあいう おあいうえ」をリップロールで読んでいきます。リップロールしているので各母音は当然聞いてもわかりませんが、頭のなかでは母音の発音をしっかりイメージしてください。
筋肉運動はすべて電気信号として脳に送られます。若干ではありますがリップロールしているときも舌の形は母音に合わせた形になります。なので聞いてる人にはわかりづらくても、リップロールしている本人は母音の感覚を体になじませることが重要です。
自分の中のイメージではしっかり前歯が見えるように、顔の上の筋肉をあげることを心がけてください。例えば「おはようございます」とリップロールで言うだけでも細部の筋肉が動こうとします。その感覚を持って実際に声に出したときには綺麗に声が出ます。
何も意識しないでただリップロールをするのとこのように母音をしっかり発声するイメージでリップロールをするのでは歌の上達の効果が全然違います。
曲の練習でもまずは全部リップロールで歌詞を意識しないで、何も考えずにただ滑らかに歌ってみる。その次に今度は歌詞をしっかりイメージしてリップロールで歌ってみる。やってみるとわかりますがなんとなく歌に近づいている感じがわかるかと思います。
(この時、以前の記事でお伝えした“腹横筋をしっかり出しながら“を意識してやっていただくとさらに歌を歌うときに近づいた練習になりますのでできる方はやってみてください)
これで実際にリップロールではなく歌を歌ったときに声にふくらみが出ます。
このように息をしっかり使えるようにするということは、歌自体のふくらみも出てきますし、上あごがしっかり柔らかくなるので、息の流れよくなります。そうすると声のボリュームもあがり、声の届くスピードも速くなります。
なので、リップロールで歌詞をイメージしながらカラオケでワンコーラス歌ってみる。そのあとにもう一回その歌を声を出して歌ってみると、声の乗りや言葉の説得力もかなり変わってくるので歌が上手くなりたい方は是非やってみてください。
それくらい歌が上手くなるためにリップロールは大事なんです。どうしてもリップロールというと低い音から高い音まで行き来する練習で終わってしまう方が多いのですが、なぜリップロールをするのか?という根本的なことを理解して考えながら練習するとリップロールの持つ力がわかってくるかと思います。
大事なのは「続けていく」こと
リップロールのような基礎トレーニングをしっかり行うことでいろいろな応用が効いてくるようになります。基礎トレーニングを怠ると、基礎が崩れていることにも気付かないため応用が効きません。練習を毎日実施することで、今自分がどこで行き詰っているのかのチェッカーになります。今回お伝えした練習方法を順番に試していただければ必ずそのセルフチェックができます。そこを練習で克服したあとに声を出してみてください。「あれ?意外と前より声がでるな」と感じていただけるかと思います。
このように自分の苦手を知り、克服して初めて応用のステップなのでまだリップロールができない方は「ボベボベトレーニング」からまずは始めていただき、リップロールがすでにできる方はリップロールが歌の上達にとても大事な基礎練だということを理解、意識して日々の練習の中にお伝えした方法を取り入れてみてください。