【声を出さない発声練習?!】3種類の風船、ロウソク発声練習法とは

前回に続き腹式発声についてお話したいと思います。前回はどうすれば腹横筋がでるかを風船やろうそくを例えにしてお話をしました。今回は風船を使って実際にやってみましょう。

腹式発声について読んでいない方はコチラ↓

目次

夜中でも出来る!声を出さない発声練習

例えば家で大きな声が出せないという人はたくさんいらっしゃると思います。夜も練習したいな、夜しか時間がないなという方には風船を膨らますだけなので簡単に練習できます。やっぱり継続的に声を出せる場所や時間はシチュエーションが限定されてしまいますので、そういった時間でなくてもできる練習をうまく取り入れてくと効率的な歌の練習ができます。このように声が出せない状況でも風船、ろうそくなどを使えば効果的な練習はできますので是非やってみていただけたらと思います。

どうしても発声の練習なので最初から声を出す練習をイメージされる方は多いと思いますがまずしっかりと声を作る、息を支える筋肉を出す練習をしないとどれだけ声をトリートメントしたとしても結局は土台がしっかりいていなかったらすべて意味がありません。最初は“腹式発声の練習だけど声は出さない“ここをしっかりと覚えておいていただけたら嬉しいです。いきなり発声したいですよね?ただここはぐっと堪えてください、この忍耐によって後で一気に伸びしろが変わってきます。

「風船を膨らませる」ことを使った練習方法・効果は?

風船を膨らましたときに必ずチェックしてほしいのが腹横筋と口がパンパンになっているかどうか。風船が膨らまない人はこのどっちかが足りないということです。

これをやるとインナーマッスルが鍛えられます。なおかつ、これはポップス(クラシック以外)を歌う方に向けてのアドバイスです。どんな練習方法かというと歩きながら風船を膨らませるんです。じっとしていると力が入れやすいので風船も膨らませやすいんですが、ステージに立って歌うとなるとじっとしていることがないですよね。やっぱり多少なりとも動くのでどうしても重心が移動してしまうため体軸がずれてしまうんです。その時も腹横筋や多裂筋は必要になります。体がどれだけ動こうがその間は歌っていますよね。ただ、だいたいの人が動いてしまうとインナーマッスルの力が抜けてしまうんです。動くと声がぶれるという方が多いのはこれが理由になります。これはただ単にインナーマッスルが動いているときに活動してないというだけです

普通の発声練習とかになると、じっとひとつの姿勢のまま声を出したりしますからなかなか気づかないんです。私のレッスンでは歩き回りながら風船を膨らませるということを実際にしています。やってみると意外とできないんですよ(笑)やっぱり風船を膨らませるのはじっとしている姿勢のほうが膨らみやすいことがよくわかると思います。

クラシックを除くという言い方をしましたけど、そういうイメージを皆さんお持ちだと思いますがクラシック(声楽)を歌われる方ってそんなにステージで移動されないですよね。

その場でしっかりと重心をおろして歌われますのでクラシックはいったん除くという言い方を敢えて深い意味もなくさせていただきました。一方、体が動いているときもインナーマッスルが出ている状態を保てないとポップスやロックなどステージで動いて歌うのは難しいと思います。なので、練習するときもステージと同じような状態で歌う練習方法にしておかないといけません。練習でできなくてもステージではできるなんてことは4000%ありませんので(笑)ステージに立つ機会がある人に向けての内容に聞こえるかもしれませんがこれはインナーマッスルをしっかり出して歌を歌えるようになるための練習としてとらえていただければ嬉しいです。

ステージパフォーマンスと発声の両立

風船を膨らませる、ろうそくを吹き消すなど、日常的なインナーマッスルを出すときの動きは静止状態がほとんどです。そうすると“体が止まっている“ということが脳に刷り込まれてしまい動きが限定されてしまうんです。なので動き回って風船を膨らませるという練習は一番効果的です。これで歩きながら風船が膨らませるようになればステージの上でもインナーマッスルを出して比較的安定した声が出せるようになると思いますのでこれは是非実践してもらいたいと思います。

「ろうそく」を使った練習方法・効果は?

これに引き続き、ろうそくの話をしたのでろうそくを使った練習についても少しお話したいと思います。ご自宅にろうそくがある方はろうそくを用意してください。

ろうそくをだいたい1.5m~2mくらい先、口と同じくらいの高さに置いていただいて一点集中でろうそくを吹き消す。それだけです。ろうそくを吹き消すときも口がパンパンに膨らんでいると思いますのでこの練習も効果的です。火を使ってよい環境の場合には、等間隔にろうそくを立てて、一本ずつ一発で消していくという練習を私のレッスンではやったりします。例えば10個ろうそくを並べて、2mくらい離れたところに立ってもらいます。一発で吹き消す、成功したら2本目も一発で吹き消すという具合です。途中で消えなかったらまた一本目からやり直してもらいます(笑)

途中までできていたのに火が消えないということは瞬発力がなくなっているということ。あとは息を集める集中力がなくなっているということが考えられます。

どうしても歌って急に高い音が出てきたり、ロングトーンをしっかり出さないといけないという場面に遭遇することが多々ありますよね。そういう瞬間的な場面に対応するのはそういった瞬発力しかないんです。ろうそくを吹き消すときというのは一瞬の勝負です。なのでろうそくを吹き消す練習というのは瞬発力をつけるのに非常に有効なんです。息の瞬発力に特化ならろうそくを吹き消す練習。息の瞬発力+インナーマッスルの持続力という割と万能な練習方法としては風船がよいかもしれないですね。風船も膨らます瞬間は瞬発力を必要とするんですが、長く息が続く限りふくらみ続けますのでインナーマッスルの持続力を保つ練習としての効果もありますので。どちらも安く買えますので練習にはいいアイテムかなと思います。

この風船やろうそくの練習をした後で、声を乗せたときに断然今までの声の出し方と全然違う!ということが実感いただけると思います。それをしっかり成功体験として感じていただきたいのでこの基礎というものはしっかりやってみてください。

「ティッシュ」を使った練習方法・効果は?

このように風船やろうそくの練習をご紹介しましたが、もうひとつ私が激推ししている練習方法があるのでそちらもご紹介したいと思います。

それがティッシュを使った練習方法です。これがとてもしんどいですけど効きます(笑)

息というのは無色なので目に見えないですよね。どれくらいの強さで息を吐いているか、どれくらい長く息を吐けているかがわかりません。なのでどこまで息をキープできているか、どこまで息が届いているかを把握するために風の動きにして可視化するんです。

やり方としては、ご自宅にある普通のティッシュを一枚用意していただきます。

ティッシュを拡げていただいて両手で持って目の前にかざしてください。その際に肋骨の下の“腹横筋(腹横筋の場所についてはこちらの記事をご欄ください)をしっかり張った状態“、そして“口をパンパンに膨らませた状態“この二つの条件を絶対に守ってください。

この二つをキープした状態で一回目の前のティッシュを吹いてみてください。今、ご自身の息の量がティッシュの動きで見えたと思います。この息の量をコントロールしていくトレーニングを今からお伝えします。最終目標としては腹横筋と口が張った状態でティッシュと地面が平行になる状態を目指していきます。これを5秒キープします。かなりしんどいと思います。地面とティッシュが90度になるように息でティッシュを持ち上げていくんですが、途中で60度になったりとか、45度になったりとか、例えば最初の2秒は90度をキープできるんだけど途中で60度になったりする方がいらっしゃると思います。ということは“息の流れが一定じゃない、息が当たっている場所が一定じゃない”ということになります。息が一定じゃないということは声にバラつきが出ているということです。これを一定にするという練習方法がこのティッシュを使った練習になります。例えば海外の合唱団や吹奏楽の練習なんかでもこの練習方法を使うんです。吹奏楽なんかは特に腹式呼吸でしっかりとインナーマッスルを出して演奏しないと楽器そのものの音が鳴りません。なので腹式呼吸というものがすごく大事にされています。これができないとちゃんと吹けないのでティッシュを壁に置いて息を吹きかけた瞬間に手を放すんです。何秒そのままキープして息ができるかみたいな地獄のような練習をしていたりします(笑)ちなみにこれは瞬発力のトレーニングも兼ねて風船でもできます。膨らませた風船を地面に落とさないように吹き上げる練習です。

要は息を一点に集中させつつ、瞬発力で吹き上げるという練習です。

練習と言ってもただ単にしんどい練習というものがそもそも私は好きじゃないんです(笑)

なのでこうやってちょっと楽しみながら、ゲーム感覚でやれる練習をレッスンに取り入れています。このように身近なものを使ったいろいろな練習方法で腹式呼吸からの腹式発声を楽しく鍛えることができます。ただ楽しく鍛えられるのはある程度インナーマッスルが育ってからになります。最初は劇的にしんどいです(笑)

この練習で大事なのは一点集中で息が出せるかどうか、インナーマッスルのパーセンテージとバランス、それと“姿勢”です。人は赤ちゃんとして産まれてから成長していく過程で体を反ることがほとんどないんですよね。必ず内臓があって、重力があって二足歩行になてからは重力に逆らえないんでやっぱり内臓も下に落ちてきます、それを支えるのが筋肉や骨なんです。歳を取ってくると骨がもろくなって、筋肉も衰えてきて、つきづらくなってきて痩せていくので内臓がどんどん下がってくるんです。そうすると背骨も支えるのがしんどくなってくるのでだんだんと前かがみの姿勢になってしまうんです。いわゆる漫画などで表現される腰の曲がったおばあさんのイメージですね。

まとめ、余談

姿勢に関して余談ですが、歌っているときって真っすぐ前を見ないんですよね。だいたい目線としては人の眉毛くらいを見て歌います。そうすると一番顎がリラックスできている位置に来て、姿勢がよくなるんです。

いい姿勢をわかりやすく言うと“野次馬”です。人だかりができていて見えないなとなったときほとんどの人は首が伸びているはずです。ぐっと胸筋が上がって、肩甲骨同士が近づいている状態になります。上半身が持ち上がるということは中の内臓も持ち上がるということなので、要は内臓が産まれたときのデフォルトの位置に戻るんですね。

デフォルトの位置に戻るということはどいうことかというと、内臓が一番動きやすい位置に戻るということです。産まれたときは然るべき位置に内臓があって、ちゃんと呼吸していたのに歳とともに内臓の位置が下がってくる。ということは内臓の位置が元々あった一番いい位置から下がってしまうということなんです。なので歳を取ると声も出しづらくなるんです。それこそプロの方でも年齢を重ねると声が出なくなってしまう一つの要因でもあります。なので、姿勢が綺麗な方はお年を召しても声は綺麗に張ってらっしゃるはずです。玉置浩二さんなんてものすごく姿勢が綺麗ですよね。だからこそあの深みのある美しい声が出せるのだと思います。それこそクラシックの方で猫背の方がいるかというといらっしゃらないです。みなさんとても綺麗な姿勢で歌われますよね。もちろん見た目もすごく大事にということを意識されているところもあると思いますが、声を出すという部分でも姿勢は大事なのであの真っすぐで綺麗な姿勢をキープされていると思います。是非腹式発声には姿勢も大きく関わってくるという部分も覚えておいていただけたらと思います。

この記事は私が書きました

浦麻紀子。うらまきこ。

大阪府出身。

ボイストレーナー、話し方トレーナー、ビジネスボイスコーチ。日本ボイストレーナー連盟資格認定(JAVCERT)

プロアーティストの仮歌、コーラスサポート、NHKプロフェッショナルの流儀、テレビ朝日系全国ネット『坂上忍の成長マン』ハモり講座の指導などのテレビ出演、名古屋大学大学院医学系での学術集会でのセミナー、豊商事株式会社での電話対応セミナー、など多岐にわたり活動中。

・20年以上に渡りボイストレーニングを指導。

・3000名以上の指導歴。

・シニアインストラクターとしてボーカルトレーナーの育成、指導。

・講師、客室乗務員、面接対策、婚活、企業様向け研修やスクールでの講演。

・コミュニケーション能力向上研修、プレゼン研修。

・メジャーレコード、プロダクションへのプレゼンライブ等。

特に滑舌、表現力、説明力には力を入れている。

自身も3枚のアルバムをリリース。全国20箇所でツアー・ライブを500本以上。

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