【歌唱力】歌が上手い人の歌はどこが違う?必要な3つの条件を解説!
では今回は「歌唱力」についてです。まずは以前もお話ししたと思いますが、そもそもみんなが思う「歌唱力」とは何かということなんです。
「あの人歌が上手いな」っていう言葉や、「あの人の歌、感動するな」という言葉は結構漠然としていますよね。
その漠然としたものを具現化してトレーニングするのがボイストレーニングなんです。歌の上手い人の歌のどこを聞いて多くの人がうまいと思っているのか。そこについてお話できればと思います。
息とリズムのない歌では人の心は動かない
例えば、ピッチも完璧、歌詞も綺麗に歌に乗っているという人の歌があったとして、この人が全くリズム感なく歌ったら、果たしてそれは歌がうまいのか、感動するのかと聞かれたら、私は疑問に思います。例えばですけど、 機械音のアナウンスってありますよね?「こちらは~の電話番号です」のように言葉を組み合わせて音声化しているものがあると思いますが、例えるならああいうものと同じだと思っています。要はピッチが整っているだけとか、言葉がはっきりしているだけという歌は、ああいう聞こえ方に近くなるんです。なので、うまくは聞こえるかもしれない。でも、 前にお話したようなその人の歌で心が動くかどうかっていうものとは別なんですね。
なので、歌唱力のある方というのは、どっちも持っていると思ってください。 多くの人が歌が上手いと思うようにピッチも確実に当てられるし、言葉もはっきりしている。でもこれだけだとただ単なる機械的な歌に聞こえるので、そこに感情を乗せていく。感情を乗せるっていうのは、これまでのインタビューでちょっとお話しましたけど、息が乗っているかどうかです。
「一般的な歌の上手さ(ピッチと言葉の聴きとりやすさ)」、「息をうまく乗せているか」 、これらがそろって歌は上手く聞こえます。加えて歌唱力がすごい人は、この要素にリズムが入ってきます。これらの各要素がきっちりできていればできている人ほど、歌唱力がすごいと言ってよいかと思います。
歌を上手く歌うための土台作りが必要
リズム感の記事でお話しましたけど、リズムを読み取るために何をしなければいけないのかというと、 その曲のちゃんとした輪郭を知らないとダメなので、曲をちゃんと分析できるかでしたよね。そして曲をちゃんと分析して歌うのと、ただ単にメロディーだけを歌うのでは雲泥の差が出てきますし、歌の仕上がりも断然変わってきます。
リズム感の記事はこちら↓
例えばですけど、私はよく料理をしますが、鶏むね肉を、柔らかく仕上げようと思ったら、 そのまま出しても柔らかく仕上がらないんですね。塩水と砂糖水につけたブライン液っていうのがあるんですけど、そういうものに例えば1日漬け込んで焼くとすごくふっくら仕上がります。これと同じようにちゃんとお膳立てをした状態で歌うと、うまく聞こえます。それを、突貫的にやってしまうからうまく聞こえないし、取ってつけたような歌に聞こえてしまうのです。歌唱力というものはとってつけたものでは絶対に成り立たなくて、きっちりとそういう土台ができているから上手に聞こえるというのが大前提です。
ただつい多くの人がそこをすっぽかしちゃうんです。つい端折ってしまい、ここの曲の「ここ」だけを上手く歌いたい!感動する歌にしたい!と考えます。ただ、それは無理な話です。その土台になるもの、つまりはそこにアプローチするトレーニングを組み込まなければ無理だと思います。なので、世の中に出てきている歌唱力がすごいっていう人は、そのあたりの土台が間違いなくしっかりしているはずです。
歌唱力と一括りに言っても、例えばじゃジャンルによっても全然違うんですね。そのジャンルによって歌唱力が上手いと評価されたり、感動すると評価されるポイントが全然違うので、一言ではなかなか言い表せられないんですけど、「一般的な歌の上手さ(ピッチやはっきりとした言葉)」「息が言葉に乗っているか」「リズム」という歌唱力の必要要素が大事になってくることは変わらないと思います。
歌唱力を上げるために普段聴かないジャンルの音楽を聴く
では次に「それを実践しましょう」となった時に、やっていただきたいのが、リズムを聞くことというのは前回までにもお話ししましたけど、それプラスとにかくいろいろな曲を聴くということです。こういう風に言うと、すごく月並みなんですけれど、普段聴かない音楽を聴くのは体とか耳とか脳って慣れているもの、 習慣になっているものに対してはそれなりに反応が早いんですけど、習慣化してないものに対しては違和感を感じるものだと思います。 ルーティンにしてること以外をするっていうのは人って苦手なんです。だから、「変化」ってみんな苦手ですよね。世の中も変化が起こる時に必ず一定数、 アンチが出てくるというのはそういう側面があるからだと思います。どうしても変化を嫌うんですね。。
でも、慣れ親しんだ曲ばっかり聴いている、自分の好きなジャンルばっかり聴いていると、結局自分の好きなものというのは偏っているので、ただひたすら同じようなものしか聴いていないということになるんですね。
その循環で何が育つかって言ったら、何も育たないんですね。要は、新しい野菜はできないんです。ずっとキャベツを育てているからキャベツしかできない。「 じゃあ今度は根菜をやってみよう!」と別ジャンルに挑戦しないと、新しい技術だったり、新しいノウハウがどうしても出てこないんです。
そして、キャベツの時はこの肥料でよかったし、この周期で水をやっててよかったけれど、別の野菜になった時にそれが通用するかと言ったらきっとしないですよね。もしかしたら枯らしてしまうかもしれません。野菜作りに例えましたけど、 お伝えしたいことは新しいものを取り入れることを怖がらないでほしいということです。新しいものを取り入れるのは、新しいことをやってほしいからではなくて、今自分が歌いたいものをより明確に、より感情をこめて歌うためには、別の方法を取り入れないとダメだよということです。だから、歌が上手い人ほど、本当にいろんな曲を聴いています。
それこそ 自分の好き嫌いに関わらず、ノンジャンルで聴くんですね。クラシックからジャズ、AORからファンクなどいろんな音楽を聴いて、歌という1つのものをとらえていくんです。
なので、歌唱力を上げるのに、もちろん 歌のトレーニング、基本的なボイストレーニングというものは当然必要です。発声の仕組み、体の使い方とか言葉の使い方っていうのは非常に大事なんですが、それよりももっと大事なことがあるってことですね。要は、歌が上手くなるためには耳を鍛えるこれは欠かせません。
「イヤートレーニング」っていう言い方もしますけど、歌唱力がずば抜けている人はとにかく耳がものすごくいいです。
知らない歌手の歌を聴きまくる
ここを、多くの人が置き去りにしちゃうんです。歌唱力を上げようと思ってまず歌の練習をやってしまいます。
そうではなく、耳を鍛えるんです。例えば2時間だけ時間ができたとします。その時に「じゃあ時間ができたから歌の練習しよう」となった時に本当に歌の底力が上がる人は2時間知らない曲を聴きまくります。声は出しません。なので、歌のテクニックに特化しちゃうと歌の練習というかたちになってしまいますけど、そうではなく、その聴いた曲の歌手の歌唱力、音楽というものを体に入れていくためには、知らない人の聴いたこともないような音楽を聞くってことをしてみてください。できれば2時間くらい。
オススメなのは、民謡とか、民族系のようなその地に根付いた音楽です。
その地に根付いたものはなぜいいのか?というと、その土地のフレージングだったり、リズムだったりっていうものが出るので。あとは、面白いのが各国の国歌です。
これは非常に面白いですよ。国によって全然違います。その国の特色によって全然作りが違ったり、ビートが違ったり、テンポが違ったりするんです。
曲の作り方とか、その国の成り立ちによってその旋律が変わったりするので非常に面白い。 例えばモロッコ の国歌はものすごくかっこいいです。
日本の国歌って、正直かっこよくはないですよね。マイナーコードのすごく暗い感じです。ピークの音が低いので、盛り上がった感じも全くありません。
このように国によって全然特色が違ったり、カラーが違うんで、いろんな国の国歌を聴くとものすごく面白いんです。そしてその中でも、私はやっぱりモロッコの国歌ですね。なぜモロッコの国歌をおすすめするかというと、日本と同じで、マイナーキー(暗いキー)から始まるけれど、 ものすごくかっこいいんです。なんていうか、普通のヒットソングみたいな感じで。
すごく勇ましいですよね。同じマイナーキーで作られているのに日本のようにしっとりしているんじゃなくて、すごくアグレッシブな感じです。
例えば戦いに赴いたり、命を落としても 敵に向かっていくようなシチュエーションのアニメーションとかにもモロッコの国歌は合うと思います。こうやって、いろいろな国の国歌を聴くとわかりますが、国歌って基本的には国民がすぐに覚えられるようにわかりやすく作ってあります。つまりはキャッチーなんです。
各国の国歌がおススメの理由
例えば今のJ-POPって結構複雑化していますよね。構成が複雑だったり、メロディーが複雑だったり、言葉がすごく詰め込まれていたりするので、若干体に入りづらい部分もあると思います。
それに比べて皆が覚えやすくっていうのが前提で作られている国歌はすごく体に入りやすいので、すごくおすすめです。是非自分のお気に入りの国歌を探してみてください(笑)
音楽を聴く方でも洋楽邦楽問わずポップスとかジャズは聞くんですけど、「国歌がめちゃくちゃ好きで聴いてます!」という方は私も知りません。だからこそ1番イヤートレーニングになりやすいものでもあるのかなっていう感じはしますね。
その他のイヤートレーニング
あとは、例えばですけ2時間で何曲覚えられるかとかもいいですね。そういうことをするだけで歌を覚える瞬発力が出てくるんです。言うならばリズムを読み解く瞬発力 ですね。チャレンジしてほしいのは、いろんな曲を聴くことに加えて、制限時間を設けるんです。例えば、10分とか。
曲を聴きながら、10分でこの曲のどこまで覚えられるか?つてことをしてみると、 意外と覚えられないと思います。普段好きな曲ばかり聴いているので、苦手なものがはなかなかに体に入ってこないんです。ただこういう瞬発力を育てることをしてあげることで、いろんな曲がすぐに体に入っていくようになります。 そして、すぐに曲が体に入ってくるということは、別のキャベツ作りじゃなくて、別の野菜作りの方法が入ってくるってことになるので、こういう習慣を続けていくと必ず歌唱力アップにつながります。このイヤートレーニングを結構みなさん抜かしちゃうんです。
何を聴くにもまずはリズムが基本
では国歌を歌唱力アップのために聴くとして、どう聴いていけばとなったらまずはリズムですね。例えばですけど、高校野球の校歌ありますよね?校歌とか国歌とかって、 4分の2のリズムが多かったりするんです。要は、「タン、タン、タン、タン」のリズムです。マーチのリズムですね。
例えばJ-POPはほとんどが4分の4なんで、4分の2と言われてもすっと入ってこないんです。だから、4分の2と4分の4の違いがわからない人が多いのが正直なところです。
ポップスでみなさんが知ってる4分の2だと、「 アンパンマンのオープニング」とかですね。「そうだ、恐れないでみんなのために」これが4分の2ですね。
4分の4に慣れている人はこの曲も4分の4でリズムを取ってしまうので「そうだ恐れないでみんなのために」もノペッとします。これはその曲の輪郭が捉えられていないということです。本当は4分の2の曲が4分の4になってしまうのはその曲の輪郭を捉えられていないということになりますよね。そうしたらその曲の良さを表現できるわけありません。複雑なリズムが大事ということではなく、曲の輪郭をちゃんと捉えることができるかということ。拍子は変拍子でもなく常に一緒なのに4分の2で捉えるか4分の4で捉えるかで大きく変わってくるよということです。
そこがわからないとノペッとしてしまいます。そして、わかっていないまま歌ってらっしゃる方もたくさんいると思います。4分の2なのに4分の4として歌っているとか。 そういうところでも歌唱力の大きな差が出ますよね。
リズムの怖いところは間違った拍でも気づかないこと
例えば楽器をやっている方だったら、そのリズムを聞いて演奏するっていうことがもう癖になってるんで、それに気づけるんですけど、カラオケ音源をバックミュージックとしてしか捉えられない人は、そこが4分の2なのか4分の4なのか気にしてないというより、耳に入ってこないのでそこはハンデがあります。
普通に間違ったリズムでもリズムは取れちゃうので、そこはスルーしてしまうんです。そこがリズムの怖いところですよね。間違っていても出来ちゃうところ。
さっき例にしたアンパンマンなんかがそうです。「そうだ」で力強く歌うと、すごく、 躍動感がありますよね。アクセントを4分の4にするとちょっと柔らかい雰囲気になります。このようにアタックの強さとかが変わってきます。指揮で言えばよりわかりやすいと思います。指揮棒で「そこはそういう風に弾いてくださいよ」とアクセントのアプローチを指示して促しているということですよね。それに逆らって歌っているってことになるのでそれは間違ったアプローチになります。つまりはそういうことです。
一流の人の歌はそこを徹底的に追及しているから感動するんですね。
曲の輪郭をしっかり捉えられているからこそ、その曲を歌った時に歌と捉えた輪郭が合致するんです。単に「メロディーだけ覚えました!」となると、 そこが合致してないので、ただメロディをなぞっているだけになってしまいます。
それでは歌のリズムとバックバンドのミュージックとが一体化していない、ただ上擦ってるだけの状態です。
これが「ピッチがちゃんと整っていて、歌詞もはっきり聞こえて、 うまいな」で終わっちゃうタイプですね。ただ普通にうまく歌えてるなっていうだけじゃ聴いている人を感動まではさせることはできません。
そこまで持っていけるか。そこがやっぱり歌唱力がある人とない人の大きな違いで、感動する歌を歌える人の歌っていうのは、リスナーがまた聴きたいと思う歌なんです。それがやっぱり本当の歌の上手さですよね。そう思ってもらえるかどうか。
人がまた聴きたいって思わないってことは、心が揺さぶられていないということです。
つまりは、具現化されたフレージングで歌えていないということです。
そして、リスナーが「この人の歌はまた聞きたいな」となる人というのは、繰り返しになりますが基本的には曲を読み解く力があります。読み解けるだけの材料をちゃんと持っているということ。 残念ながら材料不足の人が結構多いんですね。技術的には皆さん持っているものはあると思います。ただ、その材料集めをできているかどうか、 それこそ今まで「何万曲聴いてきましたか?」ってことなんです。それは覚えているか覚えてないかの話ではなく、 日々新しいものに触れていけているかどうか。
実際、曲もブームがありますよね。
こういう曲が流行ったり、こういうテンポが流行ったりっていうものがあるのに、自分だけブームに乗ってないと同義。それは好きなアーティストしか聴いてないからです。だから今からでもいいのでちゃんといろいろな曲の輪郭を捉えられるための土壌をここからしっかり作っていきましょうっていう話ですね。
知らない曲はメロディーから聴いてOK
知らない曲ならもうメロディーから聞いていいです。
まずそうじゃないと覚えられない人が多いと思います。知ってる曲は絶対リズムから聞いてほしいんですけど、多分イヤートレーニングする時って知らない曲ばっかりなので まずはメロディーをなんとなく先に覚えよう。そうしたら、なんか後ろでこういう風に音が鳴ってるな。それくらいでいいと思います。その後これって何拍子かなって考えていければいいかなと思うので、導入は自分が覚えやすいところで、 知らない曲の場合はいいかなと思います。感性で聴けばいいのかなと。
いきなり知らない曲で後ろの演奏だけ聞くってなると、もう多分途中でイヤートレーニングやめる人続出すると思います(笑)
だから、好きな曲を聴くときはちゃんとビートとかリズムを聞くようにする、知らない曲を聴くときは自分が入りやすいところから聞くようにするって分けて考えればいいと思います。
それで、 耳が鍛えられることで、ちゃんと自分の感性の引き出しの中に1個の自分の技術として入ってくることになる=歌唱力もワンランクアップになります。
多くの人があまりやっていないなと思うところはもうそこなので、今回はそれをおススメさせていただきました。
全体まとめ
歌唱力に大事なものはこの3つ
- 一般的に歌が上手いとされる基礎スキル(言葉がはっきり聞こえて音程が合っている)
- 言葉に息が乗っている
- リズム
イヤートレーニングを実施する
そしてジャンルを問わずあらゆる楽曲を聴くことで、音楽の輪郭を捉えられるようになり歌唱力は向上します。
どれだけビブラートがうまくできるかなんてものは、料理でいえば最後の味付けに過ぎません。
今日お話ししたのはその料理の材料を育てるための土を耕していい土にすることの大事さとその方法です。そうしたらいい作物が必ずできます。
土壌が悪ければ、どんなに良い種を植えたっていいものはできません。
だからまずは良い土壌ができるかどうかが大事ということです。
味付けは後で調味すればいいだけなので、良い素材をまずはそろえましょう。