【リズム感チェック方法】アカペラや譜面の理解で歌唱力は向上する
前回はリズムの歴史なども交えてリズム感とは何かについてお話しましたけど、では自分が今どれぐらいのリズム感を持っているのかはなかなかわからないと思います。今どれぐらいのレベルなのか?ということをチェックするのにやってみていただきたい方法というものがいくつかあるのでそれらをご紹介いたします。
前回の記事を見ていない方はこちら↓
リズム歌い:メロディーを外して歌う練習方法
メロディーとリズムの分離
一つ目は、わざとメロディーを外して歌うです。要は、その曲のメロディーの音を外して、リズムだけで歌います。これを「リズム歌い」っていう言い方をしますけど、音源に合わせてそれがまず きっちりできるかどうかっていうことをチェックしてみてください。
どんな曲でもいいです。その曲のメロディーがありますよね。これをリズムだけで歌うんです。つまりラップみたいに歌えるかどうか。これがちょっとでもリズムじゃなくて、メロディーに寄っちゃう人は、もうメロディーが染みついてしまっていてメロディーでしか歌が歌えないということになります。
それは節で覚えてるってことですよね。リズムで体に入っていない。節回しで入ってるので、それを抜いた時にもうわからなくなるんですね。なのでそういう方はリズム歌いができいないんです。これはものすごくいい練習です。意外と自分はリズムで取れていると思っていても、やってみるとメロディーで取っていたりするんですね。
そして、練習するときは、ちゃんと録音して一度聞いてみることが大事です。
例えば、『夜空ノムコウ』なら、 「あれか」で歌が入るんだなってわかりますよね。そして、「ら~」で、拍子の頭なんだなってわかります。これがメロディーだけで覚えてしまうとどこで入っていいかわからない!ってなってしまうんです。
リズム歌いは曲の全体像を掴むカギ
ちょっと余談ですけど、例えば、カラオケで歌い慣れている人が、生楽器の演奏で歌うってなった時に、入るタイミングがわからないっていう人も結構いるんです。カラオケは全てお膳立てされています。例えば歌い出しまであと何秒とか、ちょっとだけ歌詞が遅れて色で教えてくれたりだとか。なので、そのイントロ、アウトロが何小節あるかなんて気にもしないんです。
でも曲ってそれを含めて全部曲ですよね。それこそイントロからアウトロの最後まで知って初めてその曲の輪郭を知るということになります。ただ、歌詞とメロディーが乗っているところ以外は曲じゃないって思っている方のほうが多いです。
そういう方は、リズム歌いをした時に何拍目の頭で歌が入ってるかっていうのがもうわからなくなってきてしまいます。なので、まずは自分はこのリズム歌いが好きな曲で全部できるかどうかということを試してみてください。
声に出さずに脳内再生
そして、今はできなくても声に出さずに脳内再生できるので是非練習してみてください。朝早く起きてなど、まだ喉仏が通常の位置、声が出しやすい位置に起き上がっていない時でもできますよね。だって音の高さはどこでもいいし、メロディーではないのですから。これで十分にリズム感を養うトレーニングの1つになるんです。特にやってほしいのが、テンポがゆっくりしたもの。バラードとかミディアムバラードなどと言われるものです。テンポの遅い曲のほうが節に引っ張られがちになるので。
バラードはリズム感を養うのに最適
やっぱりミディアムアップテンポとかアップテンポのようなビートが速いもの、テンポが速いものって、もうそれ自体でテンポ感があるので、リズム歌いがやりやすいんです。逆にバラード、例えば前も題材に出しましたけど、MISIAさんの『Everything』でリズム歌いしましょうってなった時に、サビなんかメロディーで歌ってる部分が少ないですよね。
あと、結構空白や休符があったりするので良い練習になります。メロディーだけで歌ってしまうと「You re、 E~verythi~ng」、をなんとなく伸ばして歌ってしまうはずです。
このように、バラードは特に、すごくいいリズムの勉強になると思いますので是非試していただけると面白いと思います。
ちなみに歌が上手な人でもこれができない人は多いです。やっぱり歌う形式がちょっと変わると、それこそ生バンドになったり、バンドの編成が変わったりとかすると、もう分かんなくなってしまいます。これはやっぱりそのアーティストのカラオケの音源が基本になっちゃってるんです。間奏ではギターソロが入っていて、そのフレーズが終わったらボーカルって覚え方をするからですね。そうするとリズム歌いとは逆の練習法になってしまうんですよね。それで歌のトレーニングにならないのかって言ったら、それはなります。ただ覚えてちゃんと脳内再生できるっていうことも大事ですけど、どんどんとリズム感がいい歌を歌うっていうところからは遠ざかってしまうということにもなります。
後ろの演奏から聴く
前回の記事の復習にもなりますが、例えば好きなアーティストが新曲を出したってなった時に、1回はもう、メロディーを中心に聴くとは思うんですけど、正直もう二回目からは後ろの演奏から聴いてほしいと思います。そうしたら多分、知らない間にちゃんとその曲を歌うとき、体の中でちゃんとカウントをとっていると思います。そうなるのが一番いいかなと思いますね。このようにリズム歌いするっていうのが、リズムをキープするためのトレーニングの第1歩です。
- アカペラでのリズム歌い
そして、それができるようになったら今度はリズム歌いをアカペラでやってみます。その次は体内時計でビート、テンポをちゃんと合わせていくトレーニングです。もちろん人間だから、指揮者でもない限り完璧じゃありません。でもかけ離れたらまずいってことですよね。
大体ちょっとゆっくりになったり早くなったりするところはあれど、基本的には曲ってテンポが決まっているので。Everythingなら冒頭の「すれ違う」はこれ全部裏で入ってますけど、こういうところがわかってきます。そして、間奏も端折らず、 頭の中で『Everything』だったら印象的な弦のフレーズがあるので、その弦のフレーズも脳内再生していただければと思います。
「ここでなんか音が上がってたな」みたいな。そんな感じでも全然いいと思いますのでそれで1回頭から最後までアカペラでリズム歌いをフルでやってみてください。 たぶん迷います(笑)あれ?ここの感想はこれぐらいの長さだったかな、と。
曲の理解とリズム感の重要性
そうなってしまう原因は簡単で、その曲の輪郭を知っていないからになります。知らないのに歌おうとしてるんだから、それはうまくなる限界はあるよねっということになってしまいます。なぜならアーティストやその曲を作った人は、その曲の良さを出すために全部土台から作っているので、歌う人が本当にその曲の良さを出したい、その曲をしっかり歌いたいってなった時に、ちゃんとそこを知っていくことは当然大事になりますよね。なので、練習っていうよりかは大事なのは曲をちゃんと知ることなんですね。
その曲の知り方に偏りがあると、 歌も天井が見えちゃうよという。だから、アカペラでまずリズム歌いが音源を聞きながらできたら、今度はアカペラだけで全部テンポを合わせて、間奏も前奏も後奏も自分が覚えいてる範囲でやってみる。音楽をミュートにして、せーのでやって、 どれぐらい狂ってるかな?って、最後にボリューム上げて聞いてみるのもいいです。「ああ、もうとっくに終わってた。。」とかがわかります。そうなるとちょっと途中でどこかゆっくりになってたのかなと気づくことができますよね。
リズムトレーニングのまとめ
まとめると、いつもとは違うかもしれませんが、後ろの演奏から聞いてみて、リズム歌いというところをまず始めてもらいたいということです。それができれば、私はリズムについてはもう8割型クリアでいいんじゃないかなと思います。
これができたら、今度はそこから音楽的なリズムのトレーニングに入っていくという感じなので、まずテンポとビートがちゃんと体でとれるかどうかっていうトレーニングが大事だということを理解いただき、ちゃんとリズム歌いができるか、アカペラでちゃんと自分でリズムを数えられているかっていうことをチェックしていただければなと思います。
譜面の重要性と理解
譜面は音楽の立体的な表現を可能にする
そしてその 1歩先のトレーニングが譜面を見ながら歌うなんですね。カラオケに慣れてる方っていうのは、譜面を見る癖がないので、どうしてもその画面を見ても、お膳立てされているので歌詞とかテロップが出るのを見て歌うと思います。私は譜面の読み書きは早い段階でできるようになった方がいいと昔からずっと言っています。これは自分が音楽家になりたい、なりたくないっていう問題ではなくて、自分の好きな曲をしっかり知ることでその曲を表現できるから、譜面を見ながらやった方がいいという考え方です。リズム歌いとか、アカペラでそれをやるっていうことができたら、今度は実際にその曲の譜面を使ってトレーニングしていきます。 現代って音源ありきの楽譜なんです。なので、楽譜がなくても、音源があればなんとかなるんですけど、それこそ、今のような録音技術が発達していない世の中で、クラシック音楽とかがそうですけど、譜面でしか残っていないんですよね。
ベートーべンが弾いたピアノソナタが音源として残っているかといったらあるわけないんです。なので譜面っていうものがあるんです。そしてその譜面の指示はとても細かいんです。ここは力強くとか、軽やかにとか、色々弾き方や奏法に注文をつけるんですね。なので、譜面は紙面から立体的な音楽を作り出すための一番大事なツールです。
譜面の解釈で、音楽の表現力を豊かに
その譜面を見る人によって解釈も違います。ベートーベンは本当はこういう風に弾きたかったのではないかなと。それで派閥が分かれたりとか、この人が奏でるベートーベンはすごく躍動的だと言われるのはそういうところからですよね。譜面でしか存在しないわけだから。実際に耳で聞いていないわけだから、ここの「力強く」っていうのは、どういう力強くなんだろうか。「力強く」もいっぱいありますよね。勇ましい感じなのか、山のように動じない力強さなのか、どんな強さを表現したかったのかっていうのは、作った本人にしかわからない世界です。このように譜面っていうのは、その曲全部の情報が集まっているものなんです。だからこそ、譜面を見て歌っていただきたいんです。
ただ、こういう風に聞くと、「なんか大変だな、、勉強、座学みたいだな」と思われると思いますけど、そうではなくて、読めなくてもいいんです。譜面を見てリズム感が向上、より深い曲の理解に例えばAメロとサビのどことどこの音が一緒か、今あなたわかりますか?って言われた時に、 感覚で歌っているともうわからないですよね?という話です。オクターブってこんなに音が開いてるんだとか、譜面を見て初めてわかるんです。例えばここの音とここの音が同じなんだったら、同じように出せばもっと楽に歌えるんじゃないか?ってなると、もっと歌の表現の幅が広くなりますよね。「なんかこの音出しづらいな…」で終わって、原因がわからないまま歌うと、それ以上はもう伸びないです。なのでやっぱり譜面って大事なんです。
ちゃんと読めるか読めないかじゃなくて、同じところに黒玉があったら、同じ音なんだってわかることが大事。要は音を情報として目で見るってことなんです。目で見れるようになると、採譜もできるようになります。譜面を書くのもちゃんとルールがわかっていれば、誰でもすぐに譜面なんて書けるようになります。
音楽の授業とかで“タイ”とか“スラー”など音の並びについて学んだことがあると思います。「なんでこんなに分ける必要があるんだろう?」とかって思いましたよね。なぜそうしているのかって言うと、 さきほど言ったみたいに音源がない時代から譜面っていうのは作られていて、1枚でその音が鳴るように作らないとダメなので、その譜面の中に完璧なリズムも盛り込まないとダメなんです。
リズム歌いと譜面を見るだけで、音楽の理解が深まる
リズムがわかるように作っているのが譜面なんですね。 なので、譜面を読めるとリズム感が良くなるんですね。繰り返しますが、完璧に読めなくても、見てるだけでもいいんです。ここの音とここの音、例えばこっちは8分音符だけど、こっちは16分音符。ということは、16分の方が短いから、こっちはさらっと歌えばいいんだ。そして、こっちの音は8分音符だから、ここはちょっとしっかり歌おうかなっていう風にできると、波が出てきますよね。このように譜面はリズムを知るうえで、曲の全体を把握するための最上のツールなんです。
譜面を見て歌うことをやっておくと、 譜面を使わず練習した曲とは雲泥の差があります。自分で意識していなくても、ちゃんとグルーヴにリズムに乗ってくるようになるんですね。
このようにリズム感がまだわからない人は、リズム歌いみたいに頭で考えながらやっていくっていうことと、無意識的にフィジカルに入れてやっていくということを同時にやっていくと、曲の理解が深まってちゃんと体でリズムを取れるようになってくると思います。